この記事の目次
はじめに
こんにちは、お金のよろず屋管理人のうーざんです。
新型コロナウイルス感染症による影響は深刻で出口がみえない状況です。
ネット系ビジネス以外の商売をされている方は本当に不安でつらい時間を過ごされていることと思います。
従業員さんを抱えていらっしゃる事業者さんだと、簡単に休業するわけにはいかず日々の固定費がご負担になっているのではないでしょうか。
そんななか一番の悩みはやはり「運転資金が尽きかけている」、あるいは「運転資金がいつまで持つのだろう」という点だと思います。
企業はどんなときに「倒産」するのでしょうか?
赤字が続いたとき?
いいえ。
答えは「支払うべきお金(債務といいます)が払えなくなったとき」
です。
借金・給料・税金・得意先への仕入代金etc・・・
これらがどう頑張っても払えないという状況になったとき、
企業は倒産します。
個人も同じですね。
水道料金が一度遅延しても、クレジットカードの支払が遅延しても、住宅ローン返済口座の残高が足りなくて返済が遅れても、一度の失敗であればそれで破産することはありません。
その状態が続いてどうにもならなくなったときに「破産」するのです。
そこで今回は、とくに事業を行っている方(個人・法人とも)の
「手元資金の重要性」
についてお話したいと思います。
個人の住宅ローンの返済については、今回お話する「事業資金」とはまた別の観点から考慮しないといけません。
住宅ローンの繰上げ返済の是非については、こちらの記事で詳しく解説していますのでこちらもあわせてご確認ください。
借金は少ない程いいか?
タイトルにもしたフレーズですが、果たして「借金は少ない程いい」のでしょうか?
借金があると落ち着かず、完済するとホッとしますよね。だから少しでもお金に余裕ができると、
すぐに「繰上げ返済」したがる経営者さんがいらっしゃいます。
結論からいえばこれは経営者としてタブー(厳禁)です。
一度借りた「借金」は経営者さんにとってある種の「権利」です。
それは「約束した期限まではお金を返さなくいいよ」という「権利」です。
これを法律の言葉では「期限の利益」といいます。
もし、お手元に銀行からの借入の契約書があるという方は、契約書の条文を読んでみてください。
そこに間違いなく「期限の利益」という言葉が記されているはずです。
繰上げ返済というのは、この「期限の利益」という権利をあえて放棄する行為です。
この権利放棄と引き換えに得られるのは何でしょうか?
一番は「将来の金利負担の減少」ですよね。
あとは、経営者さんのホッとする気持ち・・・でしょうか?
では実際に「繰上げ返済」によって得られる最大のメリットであろう「金利負担の減少」はどのくらい大きなものなのか、
果たして本当に「期限の利益」という権利を放棄するに値するメリットなのかを、
次にお話していきたいと思います。
「繰上げ返済」で得られるメリット(=金利負担の減少)はどのくらい?
それでは実際に繰上げ返済によってどのくらいの金利が節約できるのかみていきたいと思います。
- 当初借入額3千万円、期間5年(元金均等返済)、金利2%の借入を
- 残高がちょうど半分(1千5百万円)になったところで全額を繰上げ返済する
とした場合、繰上げ返済によって軽減される金利負担は、
362,490円
です。
この金利を支払うはずだったのは、5年間のちょうど半分なので今後2年半でこの額を支払う予定でした。
単純に1か月あたり(2年半なので30か月)とすると、
月1万円ちょっと
の負担です。
これと引き換えに2年半かけて1千5百万返せばいいという権利を放棄するのは賢明な選択でしょうか?
あなたは、「自分に万一のことがあった場合に」と考え、会社契約で生命保険などを契約していませんか?
その保険料で月何万円支払われていますか?
今回のコロナウイルスのように、天災的などうしようもない外的環境の変化によって急激に経営が悪化することはあり得ます。
その際に不安になって借入するのと、すでに持っている「期限の利益」という権利を放棄せず、約束通り返済していくのとどちらが良いでしょうか?
もちろん今回のような事態においては、政府から緊急融資制度や助成金などの支援策が用意される場合もあります。
今回の新型コロナウイルスで影響を受けた事業者様向けの支援策については、こちらの記事で詳しく解説していますのでこちらもあわせてご確認ください。
ちなみに金利は当然「経費」ですので、利益が出ている企業であれば税負担軽減が見込めます。
中小企業の法人税率は所得によって約23%~33%程度ですので、先ほどの金利負担の減少額は法人税の増加分(金利という経費が減った分の税金増)を考慮すると24万~27万程度ということになります。
さらにいうと、シミュレーションではあえて金利の設定を高めの2%にしましたが、これは現在の金利水準でいうとやや高い水準です。
日本銀行が毎月出している「貸出約定平均金利の推移」というレポートによると、直近の2020年1月時点での
地方銀行の平均貸出金利(新規に実行されたもの)は
0.809%
です。
また、信用金庫の平均貸出金利(新規に実行されたもの)は
1.603%
となっています。
この金利よりも自社の金利がかなり高いという場合には、自社の調達を見直してみると良いかもしれません。
自社の調達金利が2%よりも低いのであれば、金利が減少するというメリットはさらに小さくなります。
すでに借り入れたお金はよほどのことがなければ(銀行をだますようなことをするなど)、返済を迫られるということはありません。
ですが、一度返してしまったお金はもう戻ってきません。
僅かばかりの金利(万一の場合の保険料と考えると良いかもしれません)と、手元にお金があるという経営の安定性のどちらを取ればよいかは、
賢明なる経営者の皆さまには明白かと思います。
借金ゼロと借金1億どっちがいい会社?
ちょっと煽ったチャプタータイトルになってしまいスミマセン(笑)
借金ゼロと借金1億の会社、どっちが優良だと思いますか?
「いきなりそんなこと言われても、それだけの条件じゃ比較できないよ」
ですよね。
ではこれならどうでしょうか?
借金ゼロで手元資金が10万円の会社
借金1億で手元資金が1億10万円の会社
あなたならどちらと取引したいと思いますか?
どちらも「ネットキャッシュ(純現金と訳され、手元のお金と借金を相殺した額のこと)」は同じ
10万円です。
ですが、
手元預金1億ちょっとの会社
と
ゼロに近い会社
どちらが取引の相手として安心感がありますか?
答えは明白ではないでしょうか。筆者なら当然「手元資金が1億」の会社とお付き合いします。
少し極端な例でしたが、
重要なのは借金の少なさではなく、手元資金の厚さだ
ということがご理解いただけたのではないでしょうか。
銀行も同じです。
手元資金ゼロで「このお金がないと明日にもつぶれてしまう」といって500万円借入に来る人と
借金は1億あるけどそれは「期限の利益」があり、今後数年かけて返済していくので新たにお金を貸してほしいといって2千万円借入に来る人と
どちらの方が融資しやすいと思いますか?
手元に資金がないと、経営改善のための打ち手(対策)も打てなくなってしまいます。
お金が無くなってから借入にいくのでは遅いのです。
ですから、借金の少なさを誇るよりも、手元資金の厚さを誇れるような経営をすべきなのです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
経営においては、
いかに手元資金をつねに厚くしておけるか
に心を配るべきです。
手元に当面の運転資金さえあれば、天変地異によって一時的に経営に打撃を受けてもまた立て直すことも可能です。
打撃を受けて「支払うべきお金(債務)」が支払えなくなってしまったらそこでオシマイです。
いざという時に、せめて半年や1年間は凌げるくらいの「手元資金」を確保すべく、普段から上手に銀行を活用するようにしていただければと思います。
以上、最後までお付き合いありがとうございました。
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