この記事の目次
はじめに
こんにちは、お金のよろず屋管理人のうーざんです。
最近新型コロナウイルスの影響により、日本のメガバンクの一角を占めるある銀行の経営が危ないなどという根も葉もないデマがネット界隈で飛び交っているらしいですね。
もしかしたら当サイトの読者の方でも聞いたことがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
上記の銀行が危ないという噂の根拠は、韓国への融資残高が高いためコロナウイルスの影響で韓国経済が停滞してこれらの融資が回収不能になるため、倒産の危機にあるというものらしいです。
筆者が調べたところ、2019年9月末の時点でその銀行の韓国向け融資残高は約82億ドル(1ドル100円で8200億円くらい)ほどの水準でした(2019年度中間決算資料より)。
確かに何も知らずにこの金額を聞くととても大きな数字に思えるかもしれません。
ですが、その銀行の海外貸出は2019年9月末時点で2500億ドル(約25兆円)あります。
海外貸出全体に占める韓国向けの割合はわずか3%程度です。
そして当然ながら国内向けの貸出は海外向けよりもさらに多く、2019年9月末で約56兆円あります。
国内と海外合わせた貸出が80兆円を超えるなか、韓国向けはわずか1%程度の割合です。
もちろん、全体の1%が焦げ付けば経営への影響は大きなものとなるでしょう。
ですが、韓国向け融資が「すべて」焦げ付くこと等まずあり得ません。
また、同じ2019年9月末のその銀行グループ全体の自己資本は約8兆円です。
万に一つもあり得ませんが、仮に8200億円全額が焦げ付いてもこれで倒産するとは思えません。
災害や今のような感染症などで世の中が混乱すると、このような根も葉もない「デマ」がどこからともなく湧いてきます。
きちんと情報を取捨選択して、このようなデマに踊らされることがないようにしたいものですね。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、
長らく金融緩和の影響で銀行の収益環境が厳しくなっているのは事実です。
筆者も元銀行員ですが、筆者が退職したころよりもさらに環境が厳しくなっていることは明らかです。
そんな世の中ですから、
銀行が破たんした場合に預貯金がどうなるのか
ということは今一度おさらいしておきたいところですね。
そこで今回は、「ペイオフ」制度について学びつつ、
銀行が破たんした場合預金は本当に1千万円までしか保護されないのか?
というところを解説していきたいと思います。
尚、現在の銀行業界がこれほど厳しい経営環境にある理由については、こちらの記事で詳しく解説していますのでこちらも是非あわせてご確認ください。
預金保険制度とは
「ペイオフ」についてお話する前に、まずは「預金保険制度」についてご説明します。
「預金保険制度」制度とは、金融機関の破たん時などに国民の皆さんの預金を守るために政府と日本銀行、それに全国の民間金融機関が出資して作られた制度です。
この制度には日本国内に本店のあるすべての民間銀行や信用金庫・信用組合などが参加しており、参加金融機関は預金額に応じた「保険料」を機構に納めています。
万一どこかの金融機関が破たんした場合には、この全国の金融機関から集めた「保険料」を基にその金融機関に預金していた人の預金を保護する
という制度です。
尚、基本的に「外貨預金」以外の預金はこの制度の対象となりますので、万一金融機関が破たんしても一定額までは保護されます。
預け入れた全額が保護される預金もある
金融機関が破たんしたら、保護される預金は
1千万円とその利息まで
と思っていませんか?
実は預金のなかには1千万円を超えて預けていても「全額保護される預金」があるんです。
以下の3要件を満たす預金は「預金保険制度」で全額保護されると決められています。
- 「無利息」であること
- いつでも払い出しが可能なこと
- 「決済サービス」を提供できること(要するに口座振替で各種支払が可能なこと)
これって普通の預金口座と違う点といえば、「利息の有無」だけですよね。
ということは普通預金に利息がつかなければ、銀行が万一破たんしても預金を全額保護してもらえるということです。
法人では「当座預金」がこの3要件を満たす預金となっており、当座預金に預けている預金については全額保護されます。
しかし、一般の個人の方で銀行に「当座預金」を持っている方はほとんどいないでしょう(当座預金開設には審査が必要です)。
でも大丈夫です。
個人の方でも「全額保護」になる預金があるのです。
それが、「無利息型の普通預金」(決済用預金など銀行によって呼び方が異なる場合があります)です。
今、銀行の普通預金の利率はいくらかご存知ですか?
税引前で0.001%というのが2020年3月現在の一般的な利率です。
これはあえて利息ありの口座にしておく意味があるでしょうか?
ちなみにすでにお持ちの利息ありの普通預金口座を「無利息型の普通預金」に切り替えることもできますし、新たに作り直すこともできます。
利息がつかないという点以外は通常の口座と何も変わりありません。
口座番号などもそのまま引き継げるので、変更したいと思ったら銀行の窓口で相談してみましょう。その場で変更手続きが完了します。
1千万円は最低保証額、それ以上に戻ってくることもある
金融機関が破たんした場合、1千万円とその利息以上にお金が戻ってくる場合があります。
実は
1千万円とその利息まで
というのは「預金保険制度」で最低限保証されている金額であり、絶対にこの金額までしかお金が返ってこない
というわけではありません。
「預金保険制度」のホームページをみると
1,000万円を超える部分は、破綻金融機関の財産の状況に応じて支払われます。(一部カットされる場合があります。)
と記載されています。
そうなのです。原則は全額を返す努力をしますが、破綻金融機関の財産の状況によっては
一部カットされる場合があります
というのが実際のところなのです。
実は2010年に日本振興銀行に初めて適用されるまで預金を元本1千万円と利息までしか保護しない
「ペイオフ」は歴史上発動されたことがありませんでした。
それまでも全国でたくさんの金融機関が破たんしていましたが、公的資金の投入などで
預金者の預金がカットされたことはなかった
のです。
これは玉虫色の文言で解釈する側の裁量によって基準が変わってしまうためなんとも言えないのですが、
「日本の金融システムに与える影響が大きい」
とされると、公的資金の投入などによって預金者の預金が全額保護されることが多いです。
逆に上記の振興銀行の場合は、カットされる預金総額が100億円程度とそれほど大きくなかったため当時の政府や日銀総裁などから「金融システムに与える影響は大きくない」
と判断されたため「ペイオフ」が発動されたということです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
銀行が破たんした場合、必ず「ペイオフ」が発動され預金1千万円と利息までしか保護されないというわけではありません。
さらに、「ペイオフ」が発動された場合でも「無利息型の普通預金」であれば
預入額が1千万円を超えても「全額保護」されます。
雀の涙以下の利息を取るか、いざという時に備えて無利息型の普通預金(決済用預金)に切り替えるか
あなたはどっちを選択しますか?
以上、最後までお付き合いありがとうございました。
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