こんにちは、お金のよろず屋管理人のうーざんです。
明治時代の施行依頼120年振りに「民法」が見直され、いよいよ2020年4月より「改正民法」が施行されます。
そのなかでも多くの方に影響を与えそうな改正点のひとつが、
「第三者保証」が実質的にほとんどなくなるだろう
というものです。
事業用融資を受ける際に連帯保証人をつけることはごく一般的ですが、代表者や大株主などの実質的に経営に関与していると思われる方「以外」の
「第三者保証」をとる際には、
「公証人(こうしょうにん)」による保証意思確認が必要
とされました。
「公証人」というのは、書類が確かにその人の意思に基づいて作成されたことなどを確認してくれる人で、「法務大臣」によって任命された特別な人のことをいいます。また、「公証人」は全国に約500名程度しかいません(日本公証人連合会HPより)。
これにより金融機関などの債権者(おカネを貸すひと)にとっては非常に面倒な手続きが求められるため、実質的に「第三者保証」はよほどの特殊なケースを除けばほぼなくなるとみて良いでしょう。
また「第三者保証」に関する規定の改正以外にも、「保証極度額」の設定のない保証契約書は無効となることが明記されるなど、いくつか保証に関する規定が改正されています。
そこで今回は実際に民法改正によって、保証人に関するルールがどのように変わったのかをみていきたいと思います。
この記事の目次
「第三者保証」とは
「第三者保証」とは、以下に該当する人「以外」のひとが保証人となることをいいます。
- 主債務者が法人である場合、その法人の理事・取締役・執行役・議決権の過半数を有する株主等、実質的に経営に深く関与していると考えられる人
- 主債務者が個人である場合、主債務者と共同して事業を行っている共同事業者や主債務者の事業に現に従事している主債務者の配偶者
上記に該当する方以外のひとが保証人になろうとする場合は、「公証人」の前で保証をする意思を宣言しなければ保証人になることはできません。
第三者保証を行う場合の手続き
では「第三者保証」を行う場合には、どのような手続きが必要となるかをみていきたいと思います。
- 公証人がいる「公証役場」に、保証人になりたい本人がいったうえで、
- 保証をする債務の内容を具体的に認識しているか
- 保証人となる場合、いざという時にには自らが支払をする必要があるなど大きなリスクがあることを認識しているか
- 債務者の財産や収支の状況について情報提供を受けたか
- 保証人となろうと思った経緯や動機などを
- 公証人に確認され、保証意思が確認された場合には「保証意思宣明公正証書」という書類が作成されます
また「保証意思宣明公正証書」は銀行と保証契約を交わす日より前1か月以内に作成されている必要があります。
尚、この手続きにおいて「公証人」の方には1万1千円の手数料を払う必要があります。
極度額設定のない根保証契約は無効に
今回の民法改正では「極度額設定のない根保証契約」については「無効」になる
という改正もなされています。
そもそも「根保証契約」と「極度額」とは何か
について説明していきます。
「根保証契約」とは、
債務を特定せず、一定期間に発生した債務についてはすべて保証する
という保証契約のことをいいます。
また「極度額」とは、
根保証契約における「保証限度額」のことをいいます。
つまり、令和2年4月1日以降は、
「保証限度額」に定めのない(保証額が無制限)の「根保証契約」は無効
ということになります。
ちなみに「根保証契約」には「元本確定期日」というものも定められていて、保証契約をした日から5年以内の日で任意に設定されています。
「元本確定期日」というのは、
その日以降に発生した債務については保証しなくていい
という日のことをいいます。
逆にいうと、その日時点で存在している元本と利息が保証債務として確定することになります。
実は昔はこの「元本確定期日」も「保証極度額」もない保証契約がごく当たり前に交わされていました。
つまり、その契約を結んだら最後、
無期限かつ金額無制限に一切の債務を保証します
という闇金も真っ青のトンデモ契約がまかり通っていたのです。
しかし今ではこうした契約はまず存在しないため、今回の改正により明文化されただけで銀行融資においては大きな影響はないといえます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
令和2年4月1日以降の新規融資では、当然「第三者保証」は厳しく制限を受けるためほとんど取られることはなくなると思われます。
一方で、既存融資で第三者保証をしている場合はどうなるのでしょうか?
これはケース・バイ・ケースですが、外せる可能性は十分ありますので交渉してみるようにしましょう。
4月から改正になることは以前から決まっていたため、筆者が担当するお客様で先立って銀行さんに交渉したケースでは「保証は(今は)外せない」という結論になってしまいました。
そのケースでは、現在はその方は役員でも株主でもなくまったく別の会社を経営しているのですが、その会社が現在銀行から借入の返済猶予を受けているということで、
返済猶予に至った経営責任が、前経営者であるその方にもある
という理屈でお断りされてしまいました。
個人的にはあまり納得できる理由ではなく、弁護士などを立てて争えば外せるのではないかという印象を持ちましたが、
あまり銀行と事を荒立てても今後の関係性を考えたときにメリットがないため、お客様とも相談しいったんは断念することにしました。
このように、過去の融資については債権者である銀行が個別に判断していくことになりますので、必ず外せるというわけではありませんが、
相談しただけで銀行と険悪になってしまうということはまずありませんので、
役員や株主ではないのに保証人になっている
という場合にはまずは銀行に相談してみましょう。
以上、最後までお付き合いありがとうございました。
保証人と連帯保証人の違いについて、きちんと理解していますか?たった2文字の違いですが法的には責任の重さが全然違います。
以下の記事でその違いについて詳しく解説していますので、こちらもあわせてご確認ください。
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