小規模企業共済の活用で個人事業主も節税を!【会計事務所職員が解説】

この記事の目次

はじめに

こんにちは、お金のよろず屋管理人のうーざんです。

本日は個人事業主の節税対策のなかでも特に効果が大きい「小規模企業共済」制度についてご紹介していきたいと思います。

個人事業主の方が税金の額を減らそうとすると方法は大きくわけて3つしかありません。

  • 収入を減らす ・・・×
  • 経費を増やす ・・・△
  • 控除を増やす ・・・〇

まず1番目の収入を減らすのは本末転倒ですよね。事業を行う大きな目的はまずは「お金を稼ぐ」ことのはずです。

それなのに収入を減らしてしまっては意味がありませんよね。

次に2番目の経費を増やすはどうでしょうか?これはケース・バイ・ケースで有効な場合と、意味がない場合があります。

経費を増やすということは当然手元に残るお金は減ります。税金の仕組み上、

税金の減少額<経費で支払った金額

という関係性が常に成り立ちます。

例えば、税率20%の人が100万円の経費を支払った場合

税金の減少額は

100万円×20%=20万円

となります。

ということは100万円支払ったことで、税金は20万円減ったものの残り80万円は経費としてどこかに流出してしまったことになります。

つまりその80万円が将来違う形で自分に収入をもたらしてくれる(あるいは経費が削減できる)ような支出である場合にのみ、経費を増やして税金を減らす意味があるのです。

3番目の所得控除はどうでしょうか?

所得控除は「生命保険料」や「地震保険料」、「扶養」などの人的控除など様々な政策的配慮により所得税の負担軽減を図る意図でもうけられているものです。

そのため、その支払いそのものが事業主さんにとって「メリット」があるものが多く、なおかつ所得控除を受けることで税金の負担も減らせる

というものになります。

今回はその「所得控除」のなかでも年間最大84万円と金額的に最も大きな恩恵を受けられる「小規模企業共済」について解説していきたいと思います!(前置きが長くてスミマセン・・・)

小規模企業共済制度とは

さて、やっと本題です(汗

「小規模企業共済」制度とはどのような制度なのでしょうか?

独立行政法人中小企業基盤整備機構という、経済産業省の出先機関のようなところが運営している

個人事業主や中小企業の経営者のための「退職金制度」

です。

小規模共済のメリットは以下の通りです。

  1. 掛金が全額所得控除できるため節税になる
  2. 掛金は月1,000円から月70,000円(500円単位)まで選択できる
  3. 掛金額は何回でも変更可能なため、経営状況にあわせて柔軟な設定ができる
  4. 受取時も退職金や年金として控除が受けられるため税負担がない、もしくは小さい
  5. 払込掛金の範囲内で1.5%程度の金利で貸付金の利用が可能

以下では上記メリットについてひとつずつ詳しく解説していきます。

掛金が全額所得控除できるため節税になる

 加入前の税額加入後の節税額
課税所得 月1万円月3万円月5万円月7万円
200万円309,600円▲ 20,700▲ 56,900▲ 93,200▲ 129,400
400万円785,300円▲ 36,500▲ 109,500▲ 182,500▲ 241,300
600万円1,393,700円▲ 36,500▲ 109,500▲ 182,500▲ 255,600
800万円2,034,200円▲ 40,100▲ 120,500▲ 200,900▲ 281,200
1,000万円2,806,000円▲ 52,400▲ 157,300▲ 262,200▲ 367,000

(表は中小機構のHPにあるものをベースに筆者が加工したものです)

税額については、所得税と住民税を合算した税額で記載しています。また、表の400万円と600万円の節税額がほとんど同じになっていますが、間違いではありません。

冒頭にも説明した通り、節税額というのは

支払った額 × 税率 = 節税額

で算出されますので、所得額が違っても税率が同じである場合には節税額は同額になります。

参考までに個人の所得税と住民税の税率表をご覧ください(所得税・住民税合算の税率です)。

課税される所得金額税率
195万円以下15%
195万円超 330万円以下20%
330万円超  695万円以下30%
695万円超 900万円以下33%
900万円超 1,800万円以下43%
1,800万円超 4,000万円以下50%
4,000万円超55%

所得が400万円と600万円の方は税率が30%で同率なので節税額も同じになります。ただし、月7万円(年間84万円)支払った場合には、400万円の方の課税所得が316万円にまで下がり、税率がひとつ下の20%の区分になるため節税額にも差が出ていますね。

以上が掛金が全額所得控除になることによる節税効果となります。

単年度で数万から数十万円の差がつくのであれば、やらない手はありませんね。

掛金は月1,000円から70,000円まで選択できる

これはその通りで、あまり説明の余地はありません。

月額1,000円から70,000円の間で500円単位で掛金を細かく設定することができます。

ご自身の経営規模や利益の状況などにあわせて柔軟な設定が可能になっています。

掛金は何度でも変更できる

掛金は何度でも変更可能です。

利益が出ているときには限度額目一杯、少し余裕のないときには掛金額を減らす

というようにご自身の経営状況に合わせた掛金の設定ができますので、できるだけ早く加入することをオススメします。

というのは、この後でも説明しますが、加入期間の長さが受取時の税金の額にも大いに影響をしてくるからなのです。

まずは最低額の1,000円からでも始めておいて加入期間ができるだけ長くなるようにするのが「小規模共済」を最大限賢く活用する方法なのです。

受取時も退職金や年金として控除が受けられるため税負担がないか小さい

これも「小規模企業共済」制度の大きな魅力のひとつです。

通常、民間の「年金保険」や退職金目的などの生命保険を積み立てても、

掛金はせいぜい一部が所得控除(年間最大で5万円、最近の契約であれば4万円です)となるだけですし、そもそも個人事業主は退職金を自分の経営から出しても、ただの生活費と同様の扱いしか受けることができません。

「小規模企業共済」は国が個人事業主や中小企業の経営者のためにつくった制度なので、税制面で非常に有利になっています。

受取時には「一括受取」と「分割受取」ができるのですが、それぞれの受取り方で税金の取扱いが異なります。

一括受取の場合

一括受取の場合は、「退職所得」としてサラリーマンの方などが会社から受取る退職金と同様の取扱いが受けられます。

退職金というのは、長年の勤続に対する労をねぎらうという意味合いが強いのと、今後収入が大きく減少するうえでの大切な老後資金という性格があることから、

税制上最も優遇されている所得なのです。

退職所得は

(退職金の収入 - 退職所得控除の額) × 1/2 = 退職所得の額

で求められます。

退職所得控除とは勤続年数に応じて下表の通りの額が収入から控除できるものです。

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円×勤続年数(80万円未満は80万円)
20年超800万円+70万円×(勤続年数-20年)

ちなみに小規模企業共済の場合の「勤続年数」は掛金を掛けていた年数で計算します。

また、年未満の端数がある場合には切り上げて計算します(10年1か月の場合11年として計算)。

20年掛金を掛けていた場合、800万円の退職所得控除が受けられますので、小規模企業共済での受取額がその範囲内であれば税金はまったくかからずに受取ることができます。

また、退職所得控除の額を超えていた場合でも、超えた額をさらに1/2にしてくれますのでかなりの低税率で受取ることが可能となります。

分割受取の場合

続いて分割受取の場合はどのような取扱いになるのでしょうか?

分割受取の場合、「国民年金」や「厚生年金」などと同じく「公的年金等控除額」という控除を受けられます。

60歳から64歳の場合 年間60万円(令和2年以降の場合)

65歳以上の場合    年間110万円(同上)

という控除が受けられます。この額は他の公的年金と合わせての金額となりますので他に国民年金や厚生年金の受取りがある方はご注意ください。

つまり、この金額の範囲内であれば税金がかからないということです。

超えた場合には、超えた金額に対して先ほどの所得税・住民税率に応じた税金が課されることになります。

尚、退職金の税金の計算方法や一括受取と分割受取のメリット・デメリットについては、こちらの記事で詳しく解説していますので、こちらも是非あわせてご確認ください。

掛金の範囲内で迅速かつ低利な貸し付けが利用可能に

「小規模企業共済」の加入者になると、自分が払い込んだ掛金の範囲内(7割~9割で納付月数によって異なります)で低利な融資が受けられるようになります。

この融資は最短で「即日(商工中金窓口で手続きの場合)」、その他の金融機関で手続きをした場合でも通常「2~3日」で実行されます。

金利も通常の「一般貸付」で1.5%(2020年2月現在)と利用しやすい条件になっています。

小規模企業共済の貸付について興味のある方は、中小機構のホームページをご覧ください。

中小企業基盤整備機構 事業資金の借入

中小企業基盤整備機構 貸付制度の最新の利率について

まとめ

いかがでしたでしょうか?

個人の節税対策として「最も有効である」といっても過言ではない「小規模企業共済」制度についてご理解いただけたでしょうか?

その理由は

  • 掛金が全額所得控除となるため年間数万円から数十万円程度の節税が可能になる
  • 受取時も「退職所得控除」や「公的年金等控除」により税負担が大幅に軽減される

という2点がポイントになります。

繰り返しになりますが、受取時の税負担を小さくするためには「できるだけ長い期間加入する」ことが重要になります。

まずは1,000円から始めてみましょう。

最後までお付き合いありがとうございました。

個人事業主の節税メリットを最大限享受するためには、まずは青色申告の65万円控除の適用を受けられるようにしましょう!

65万円控除のメリットと適用を受けるための方法については、こちらの記事で詳しく解説していますので、こちらも是非あわせてご確認ください。

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うーざん
旧帝国大学の経済学部を卒業後、大手地方銀行に就職。法人融資、個人への資産運用アドバイス、相続対策等の業務に従事。 より顧客の近くで仕事をしたいと一念発起し銀行を退職。会計事務所に就職し、お金にまつわる様々な顧客の悩み解決に向け日々活動している。 またファイナンシャルプランナー資格と保険販売資格も保有しており、顧客の保険見直しなどの悩み相談にも乗っている。