法人契約の医療保険の活用法【会計事務所職員が解説】

こんにちは、お金のよろず屋管理人のうーざんです。

2019年2月14日に国税庁から「法人保険の損金算入割合に係る税務通達見直し」がアナウンスされ(業界では日付にちなんで“バレンタイン・ショック”とよばれてました)、その後の各社一斉の販売中止、そして2019年6月28日に新通達発表と、

昨年は「法人契約の保険」の大幅な税務取扱い変更に揺れた1年でした。

昨年までは比較的業績が堅調な中小・中堅企業が多く、こうしたいわゆる「節税保険」が爆発的な人気を博していました。

原則としては解約時に課税を受けるため「あくまでも課税の繰延べ」であるとはいえ、年間に数百万円~数千万円の損金を作ることができるということで大ヒットしました。

筆者も保険の販売資格を持っているため、お客様からの相談で相当数のこうした「節税保険」を販売してきました。

保険業界では数年に一度「爆発的なヒット商品」が生まれるのが常ですが、今回は某国内大手生保が発売した「全損タイプの平準払い定期保険」を皮切りに各社が類似の商品で追随し、全国的なブームになった結果、

あまりの販売件数の伸びにとうとう目をつけられてしまい「待った」がかかったという次第でした。

今回の改正によってこうした「節税保険」は封じ込められてしまったわけですが、またしても新たな通達の抜け穴を使った「節税手法」が注目を浴びています(昔からあった方法ですが、今回の通達改正で改めてスポットライトがあたっています)。

前回の「定期保険(死亡時に大きな金額がおりるもの)」とは違い、節税額はそれほど大きくない一方で定期保険とは違い「課税の繰延べ」ではない純粋な節税も可能になる点がメリットです。

さらに今回解説する方法を使えば、実質タダで一生涯の保障を個人に移すことも可能になります。

そこで今回は「法人契約の医療保険」を活用した節税スキームについてお話していきたいと思います。

法人契約の医療保険とは

法人契約の医療保険というのは、法人が契約者=保険料の支払者になる「医療保険(入院や通院、手術などの治療を行った場合に保険金がおりるタイプの保険)」のことです。そのままですね(笑)

こちらの方が重要なのですが、保険金の受取人は法人になるようにしておきましょう。

詳しくは後ほど説明しますが、個人とすることも「従業員全員を対象にする」など一定の場合には可能です。しかしはっきり言ってあまりメリットはありませんので、「受取人は法人にする」と覚えておいてください。

今回の通達改正前に、いわゆる「節税保険」として販売されていた保険のほとんどは、死亡時(商品によっては所定の介護状態などもあり)に多額の保険金がおりてくるタイプの「定期保険」の一種で今回説明する「医療保険」とは違いますのでご注意ください。

法人契約の医療保険で節税する方法

法人契約の医療保険を支払ったタイミングで損金(経費)にする条件

2019年6月28日の法人契約の保険通達の改正により、医療保険は被保険者1人につき年間30万円までであれば支払の時に一括で損金算入(経費計上)が認められることになりました。

実はこの通達改正前には、「短期払い」といって終身で保障がある医療保険を、3年~5年程度の短期間で保険料を前払いすることで「節税」する方法が流行ったことがありました。

要するに

  • 今40歳の社長が
  • 毎月の保険料が2万円の医療保険を
  • 65歳まで(25年間)払うという契約をした

とします。

この場合に支払う保険料の総額は、

2万円 × 12か月 × 25年 = 600万円

になりますね。

これを5年間で支払う(前納というやつです)とすると、

契約から5年間は毎年120万円の経費が計上できたのです。

これが通達改正前のお話です。

本来であればこのように前払い(前納)した保険料は、経理上「前払保険料」としていったん資産計上し、その年の保険料に応じた金額だけ経費として取り崩していく、というのが税務・会計の世界の原則です。

しかし「がん保険」の経理処理に係る通達を準用して、医療保険を前払いした場合にはこのように一括での経費計上が認められていたのです。

これはやり過ぎだということで、今回の通達で原則認められなくなり「前払保険料」として資産計上し、期間の経過に応じて取り崩して経費にするという本来の処理に戻すことが通達に定められました。

ただし例外があります。

それが被保険者1人につき年間保険料30万円までであれば、前払をしていても支払の都度経費計上を認める

ということになったのです。

税金には「少額不追及」という考え方があります。

あまり細かい金額のことまでは税務署もうるさく言わないから(お互い面倒だから)、そっちでうまくやってよね!

という感じのやつです。

今回の医療保険の通達改正においてもこの「少額不追及」の考え方から、1人年間30万円(月2万5千円)くらいならそれほど目くじら立てることもないから、一括の損金計上でもOKだよ!となっているのです。

実際の通達を抜粋すると、

法人が、保険期間を通じて解約返戻金相当額のない定期保険又は第三分野保険(ごく少額の払戻金のある契約を含み(中略))に加入した場合において、当該事業年度に支払った保険料の額(一の被保険者につき2以上の(中略)保険に加入している場合には(中略)保険料の額の合計額)が30万円以下であるものについて、その支払った日の属する事業年度の損金の額に算入しているときには、これを認める。

法人税基本通達9-3-5 注2 抜粋

通達中の第三分野保険というのが「医療保険」のことになります。

しかし長いですね(笑)これでも大分カットしたのですが…。要するに年30万円(ただし1人の被保険者で2つ以上の契約がある場合にはその合計額)までの保険料であれば、一括での経費計上を認めますよ

ということが書かれています。

つまり、年30万円にうまく収まるように払込期間を調整してやればその年の本来の保険料以上に経費計上が可能になるため、「節税」が可能になるのです。

これが通達改正後のお話です。

支払ったあとは個人に名義変更すれば保険金を個人で受取れる

保険料を支払い終えたあとは、個人への名義変更を検討すると良いでしょう。

なぜならこのままでは、受取人が法人であるため被保険者に何かあっても保険金がおりてくるのは法人です。

そして法人から個人に渡すためにはせいぜい見舞金レベル(5万程度が上限というのが税務の世界での一般的な見解です)のお金を「福利厚生費」として支出するか、あるいは給与(賞与)として税金などを払ったうえで渡すかのどちらかになります。

そのため支払完了後なるべく早い段階で、契約者の名義を法人から個人に変更することで万一の際にも保険金を個人で受取ることができるようになります。

ちなみに保険契約はその時の「解約返戻金の額」で評価することとなっています。

医療保険などの契約は、解約返戻金がないかあってもごく少額(入院保険金日額の5倍~10倍など)ですので、タダ(もしくはごく少額を会社に支払うこと)で名義変更が可能となります。

解約返戻金がない場合には名義変更手続きをするだけでOKですし、解約返戻金がある場合にはその金額(入院日額1万円の契約で解約返戻金が10倍の契約であれば10万円)を支払うことで名義変更が可能になります。

また、

退職金や給与の代わりにこうした保険契約を個人名義にする

ということもできますので、このあたりのことは顧問税理士に相談してみるといいでしょう。

税理士には得手・不得手があります。保険契約にあまり詳しくない税理士さんもいますので、セカンドオピニオンとしてそうしたことに詳しい税理士さんに意見を貰うことも検討してみましょう。

実は税理士さんというのは資格者としてのプライドがあるので、「分からない・知らない」とは言えない人が多いです。

自分の知識外・専門外のことについては「そんなことはできませんよ」といって片づけられてしまうこともありますので、不安に思った場合には別の税理士さんに相談してみましょう。

顧問税理士さんというのは長いお付き合いの方が多いので、なかなか他の税理士さんに触れる機会が少ないですが、こうしたことがきっかけでいい税理士さんに出会うこともあります。

私が所属している会計事務所でも、こうした「セカンドオピニオン」を聞かれるケースはありますし、それがご縁でそのままお客様になるケースというのも年に何件かあります。

お近くの税理士さんは税理士ドットコムで無料で紹介してくれますので、ご興味がある方は一度お問い合わせしてみてはいかがでしょうか。

話がそれましたが、このように

法人で保険料を支払い終えてから個人に名義変更する

ことで法人で経費計上しつつ個人で一生涯の保障を得ることも可能になるのです。

従業員全員が加入する「福利厚生プラン」とは?

先ほどから受取人は法人で

と言い続けてきましたが、実は受取人を個人にすることも一定の要件を満たせば可能です。

一定の要件とは「特定の人だけを被保険者とする契約でないこと=全員を対象に加入していること」というものです。

この場合には「個人を受取人」としていても、全額を会社の経費とすることができます。

しかし個人の医療保険というのは、その人によって必要な保障内容というのも違いますし、会社の場合には社会保険での保障(健康保険の高額療養費制度や、傷病手当金など)もあるためどこまで必要かは疑わしいところです。

「福利厚生」として加入を考えるにしても、その分給与を上げてあげるか別のかたちで支出した方が従業員にとってもメリットを感じてもらえるのではないでしょうか。

さらに全員を対象とするため退職時や入社時の手続きなど事務も煩雑にはなります。もしも加入漏れなどがあった場合には加入している人の保険料は「給与」として源泉徴収の対象になります。

そのため「医療保険」の加入はあくまでも法人受取にして、先ほどの個人への名義変更を前提とした方がよさそうですね。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

税務通達改正によって「節税保険」の加入は難しくなりましたが、一方で金額は少ないながらも

法人で保険料を支払って個人に名義変更する

というスキームをうまく活用することで、個人・法人ともにメリットを享受することができます。

ちなみに保険は「保険会社」の販売員から入るのはオススメしません。

商品の比較ができないうえ「知識」もあまりありません(商品の知識はあってもこうした税務処理などの知識がない)。

ですから加入時には保険に詳しい税理士に相談すると、大体複数の保険会社の商品を取り扱っていますし、税務知識も豊富なため最適な商品を勧めてくれる可能性が高いでしょう。

また、保険販売後も顧問契約は続いていきますので「顧客に不利な商品を売るだけ売ってサヨナラ」といったこともできないため、ある程度安心して相談できることと思います。

意外かもしれませんが、保険の相談は(保険に詳しい)税理士に。

節税を考えるならパートナーとなる税理士は最も重要です。

医者に「名医」や「ヤブ医者」がいるように、税理士だからといって皆がなんでも知っているわけではありません。

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尚、個人事業から法人化することで可能となる8つの節税法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。こちらも是非あわせてご確認ください。

法人を設立すると節税になる8つの理由!

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ABOUT US

旧帝国大学の経済学部を卒業後、大手地方銀行に就職。法人融資、個人への資産運用アドバイス、相続対策等の業務に従事。 より顧客の近くで仕事をしたいと一念発起し銀行を退職。会計事務所に就職し、お金にまつわる様々な顧客の悩み解決に向け日々活動している。 またファイナンシャルプランナー資格と保険販売資格も保有しており、顧客の保険見直しなどの悩み相談にも乗っている。