<相続改正>配偶者居住権とは?【会計事務所職員が解説】

こんにちは、お金のよろず屋管理人のうーざんです。

2019年から相続に関する法律が順次改正され、約40年ぶりの「相続大改正」などと言われたりもしています。

大半の施行日は2019年7月1日ですが、規程毎に微妙に施行日が異なるものもあり今回ご紹介するのは、

令和2年4月1日から新たに創設される「配偶者居住権」についてです。

今回様々な改正がありましたが、そのなかでも特に影響が大きいと考えられるのがこの「配偶者居住権」「配偶者短期居住権」です。

家族のカタチが多様化するなかで、相続人間で調整がうまくいかずに相続で揉めてしまう「争続(あらそうぞく)」も増えています。

そんななかで被相続人(亡くなった人)に最も近い相続人で財産の形成にも大きな貢献をしたと考えられる「配偶者」の方の生活を守る目的で創設された制度です。

それでは早速どのような制度なのかをみていきたいと思います。

尚、そもそも相続の基本についてよく分からないので知りたい、という方はこちらの記事で詳しく解説していますのでこちらもあわせてご確認ください。

この記事の目次

配偶者居住権とは

「配偶者居住権」とはどのような権利なのでしょうか?

名前から想像がつくとおり、被相続人(亡くなった人)の配偶者だった方の「居住」に関する権利のことです。

具体的には、

  • 被相続人(亡くなった人)の所有していた居住用不動産(住宅)
  • 無償で住み続けることができる権利で
  • 期間は配偶者の方が亡くなるまでの「無期=終身」と、「有期=〇年間のように期間を定める」の2パターンがある
  • 「配偶者居住権」も財産の一部としてその権利を「評価」する(=相続税の対象となる)とともに、勝手に売却などがされないように「登記」もされる
  • 配偶者の方がその居住用不動産(住宅)の「所有権」を相続しない場合に、「配偶者居住権」の設定をすることが可能となる
  • 「配偶者居住権」を途中で外すこともできるが、その場合には「配偶者居住権」の評価額相当の適切な対価の授受がないと「贈与」の問題が発生する
  • 「配偶者居住権」が設定できるのは、被相続人(亡くなった人)が生前所有していた建物で配偶者の方が実際に住んでいた建物に限る

というのが「配偶者居住権」になります。

住宅の「所有権」自体はお子さんに相続させたいけど、配偶者の方が亡くなるまでは無償で住まわせてあげてほしい

などのケースに非常に有効な手段となります。

従来の相続では「所有権」をお子さんにした場合、お子さんが住宅を処分するなどした場合配偶者の方は住む場所を追われてしまいます。

また、そうした事態を回避するためにいったん配偶者の方に「所有権」を移した場合、相続で預貯金などの他の財産をほとんど受取ることができないなどの事態が想定されます。

例えば、相続財産が住宅(底地含む)2,500万円・預貯金2,500万円という内訳だった場合、配偶者の方が住宅を相続すると、預貯金全額はお子さんに取得する権利があります。

そうなると配偶者の方は「住まい」以外の生活の糧がなくなり、不安な老後を過ごすことになってしまうかもしれません。

もちろん円満な家族であり、お子さんが配偶者の方の生活を配慮して自身の相続分を少なくするなどの配慮があれば問題はないかもしれません。

ですが世の中は円満な家庭ばかりとは限りませんので、

配偶者の方が不安な老後を過ごすという事態を避けるために、

「居住」のための権利と「所有権」を分離して配偶者の方の生活を守ろう

というのが「配偶者居住権」制度創設の背景なのです。

配偶者居住権設定後の費用負担などは?

「配偶者居住権」を設定した場合、

建物の維持などに通常必要な費用は、原則として「配偶者」の方が負担すべき

とされています。

したがって、簡易な修理代などはもちろんですが、

毎年の固定資産税火災保険などの費用についても「配偶者」の方が負担するのが原則となります。

ただし、「固定資産税」についてはその年の1月1日時点の所有者に課税されることとされていますので、一旦「所有者」であるお子さんなどが立替て支払った後、

同額を「配偶者」の方に請求する

という形になると思われます。

これは総務省が出している「相続に関するルールが大きく変わります」というパンフレットの9ページにも、

固定資産税の納税義務者は,原則として固定資産の所有者とされており,配 偶者居住権が設定されている場合であっても,居住建物の所有者が納税義務者 になるものと考えられます。もっとも,改正法においては,居住建物の通常の 必要費は配偶者が負担することとされており,固定資産税は通常の必要費に当 たると考えられます。したがって,居住建物の所有者は,固定資産税を納付し た場合には,配偶者に対して求償することができると考えられます。

総務省パンフレット「相続に関するルールが大きく変わります」より

との記載がありますので、原則「配偶者」の方が負担することになります。

ただし、お子さんと「生計を一にしている」などの事実があれば、居住用不動産の固定資産税をお子さんが払うことは問題ありませんので、このあたりは家庭の事情に応じて柔軟な対応が可能と思われます。

また、「通常必要な費用」を超えるような大規模な修繕やリフォーム費用などについては、通常の賃貸物件などと同様に「所有者」の方の負担となることが一般的と考えられます。

配偶者「短期」居住権とは

「配偶者居住権」と同時に、

「配偶者“短期”居住権」という制度も創設されました。

これは先に説明した「配偶者居住権」とはまったく異なる制度で、以下のような内容となっています。

  • 相続開始の日(被相続人が亡くなった日)から、最低6か月間は無償で住宅に住み続けることができる権利で
  • 財産的価値はなく相続税の課税対象とはならない
  • 配偶者居住権を取得した場合には、「配偶者短期居住権」は取得できない
  • 配偶者居住権と同様に、その居住用不動産を被相続人(亡くなった人)が所有していて、亡くなる前から配偶者の方が無償で居住していた場合にのみ取得できる
  • 短期間の居住に関する権利のため、「登記」なども不要

という制度です。

こちらは、

「配偶者居住権」などを取得せず、別のところに住まいを移す場合であってもその準備期間なども考慮し最低6か月間(あるいは遺産分割の話がまとまるまで)はそのまま住み続けていいですよ

というのがこの制度の趣旨です。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

令和2年4月1日以降に発生した相続(亡くなった日が令和2年4月1日以降)において「配偶者居住権」や「配偶者短期居住権」の設定が可能となります。

特に「配偶者居住権」は、配偶者の方の相続取り分を大きく変える可能性がある点に加え、

うまく活用すれば「相続税の節税」に繋がる可能性もある制度です。

まずは制度の概要を理解いただき、活用を検討するのであれば税理士など専門家に相談することをオススメします。

相続では発生してからは、もちろん事前の「相続対策」が不可欠です。相続税を抑えることができるのはもちろん、亡くなった後に相続人間で揉める「争続(あらそうぞく)」を避けるためのアドバイスなども期待できます。

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うーざん
旧帝国大学の経済学部を卒業後、大手地方銀行に就職。法人融資、個人への資産運用アドバイス、相続対策等の業務に従事。 より顧客の近くで仕事をしたいと一念発起し銀行を退職。会計事務所に就職し、お金にまつわる様々な顧客の悩み解決に向け日々活動している。 またファイナンシャルプランナー資格と保険販売資格も保有しており、顧客の保険見直しなどの悩み相談にも乗っている。