外貨建て保険の税金について【現役会計事務所職員が教えます】

この記事の目次

はじめに

こんにちは、お金のよろず屋管理人のうーざんです。

本日は外貨建て保険の税金の仕組みについてお話していきたいと思います。

外貨預金で為替差益が発生した場合、「雑所得」という所得区分で確定申告を行うことになります。

サラリーマンの方で利益が20万円以下であれば、「原則」所得税の確定申告は不要です。

しかしそこには色々と注意点があるので、それについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

よろしければこちらもあわせてご確認ください。

また円建て保険の満期金の受取は、原則「一時所得」という所得区分で確定申告を行うことになります(保険料負担者と受取人が同一の場合)。

では、円建ての保険と外貨預金の中間のような存在である「外貨建て保険」の税金はどうなるのでしょうか?

「雑所得」?「一時所得」?

実はどの所得区分に該当するかはケースによって異なります。

そこで本記事ではそれらの違いについて詳しく解説していきたいと思います。

尚、あまりないケースではありますが、保険料を負担していた人と保険金や年金を受取る人が異なる場合には、

本記事で説明する「相続税」が課せられる場合を除いて、すべて「贈与税」がかかることになります。

本記事ではその「贈与税」がかかるパターンには触れていませんが、

保険料を払った人と、保険金をもらった人が違うと「贈与税」ということは覚えておいてください。

外貨建て保険を解約した場合の税金

これは「外貨建て保険」を受取るケースで一番多いのではないでしょうか。

基本的に「外貨建て保険」は、保険というプラットフォームを活用した「運用」です。

外国通貨建ての高金利と為替差益を取りに行くことが多くの方にとっての主要な目的となっていますので、

ある程度自分の目標とする利益が確保できた時点で解約する

というパターンが多いと思います。

そこで気になるのが出た利益にかかる税金のことですよね。

結論からいうとこの場合、

利益が50万円以内であれば、税金はかからないし確定申告も不要です。

利益というのは、

保険契約で払い込んだ保険料の総額と受取った保険金の差

のことです。

「外貨建て保険」についても円建ての保険と同様、解約時に受取る「解約返戻金」

「一時所得」として課税を受けます。

「一時所得」には特別控除50万円という控除額が設定されていますので、利益50万円以下であれば税金がかからないのです。

利益(所得)が50万円を超えていた場合は、給料や年金、事業をやっている方は事業の所得などと合算して所得を計算し課税を受ける(これを「総合課税」といいます)ことになります。

ちなみに外貨での運用をするなら、

外国の国債である「外債」や「外貨預金」の方がいいのでは?

という意見もあります。その点については、外貨建て保険が向く人・向かない人という観点でこちらの記事で詳しく解説しています。

こちらも是非あわせてご確認のうえ、ご自身に合った運用スタイルを選択していただければと思います。

外貨建て終身保険などで「死亡保険金」を受取った場合

続いては、外貨建て終身保険などの契約をしていた場合で、「死亡保険金」を受取った場合です。

この場合は

「保険料を負担していた本人」が亡くなって保険金を受取る場合と、

「保険料を負担していた人以外の人(配偶者など)」が亡くなって保険金を受取る場合

かかる税金が変わってきますので、この2つのパターンについてみていきたいと思います。

保険料を負担していた本人が亡くなった場合

表にするとこういう感じの場合ですね。

保険料を負担していた人被保険者(保険がかかっていた人)死亡保険金を受取った人

保険料を負担していた方本人が亡くなって「死亡保険金」を受取った場合、その受取保険金の全額が「みなし相続財産」として

「相続税」の課税対象となります。

「みなし相続財産」というのは、厳密な意味で被相続人(亡くなった方)の財産ではないので本来は相続財産ではないのですが、

諸々の事情を考えて「相続財産とみなして」、相続財産に加えて相続税を計算しましょう

と決められている財産のことです。

実際に相続税が発生するかどうかは、他の財産(住宅などの不動産や預貯金など)の金額にもよりますので、税金がかからない場合もあります。

ちなみに平成30年(相続税の申告期限は亡くなってから10カ月以内とされていますので、最新が平成30年分)のデータでは、亡くなった方の内相続税の申告が必要だった方は約8%でした。

相続税について詳しく知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説していますのでこちらもあわせてご確認ください。

保険料を負担していた人以外の人が亡くなった場合(配偶者など)

では、保険料を負担していた人以外の人を「被保険者(保険がかかっている人)」としていた契約において、死亡保険金を受取った場合はどうなるのでしょうか?

表にするとこんな感じの場合です。

保険料を負担していた人被保険者(保険がかかっていた人)死亡保険金を受取った人

この場合、夫が受取った保険金は「一時所得」として課税されることになります。

一時所得は、先ほどの中途解約して「解約返戻金」を受取った場合と同じですね。

保険契約で払い込んだ保険料の総額と受取った保険金の差

50万円以下であれば課税されることはありませんし、確定申告も不要です。

50万円を超えていた場合は、給料や年金、事業をやっている方は事業の所得などと合算して所得を計算し課税を受ける(これを「総合課税」といいます)ことになります。

外貨建て保険の年金を受取った場合

外貨建て保険の「年金」を受取った場合はどうなるのでしょうか?

この場合は、円建ての年金保険と同じように「雑所得」として課税を受けることになります。

「雑所得」の計算方法は、

その年に受取った年金の額から

支払った保険料総額の内、その年に受取った年金に対応する分の保険料を経費として引いた差額

を申告することになっています。

これらの情報は保険会社から「支払調書」という様式で通知が来ますので、それをみれば分かります。

万一失くしてしまった場合には「再発行」もできますので、保険会社のコールセンターなどに連絡して依頼するようにしましょう。

尚、この場合の受取額などは「円換算」した金額で計算することになりますが、この金額についても保険会社からの「支払調書」に記載されていますのでご安心ください。

尚、「雑所得」についても「一時所得」と同様に、 給料や年金、事業をやっている方は事業の所得などと合算して所得を計算し課税を受ける(これを「総合課税」といいます)ことになります。

定期支払金を受取った場合

「外貨建て保険」の中には年1回など定期的にお金を受取れる「定期支払金」のついた商品もあります。

こうした「定期支払金」についても、

「雑所得」として、給料や年金、事業をやっている方は事業の所得などと合算して所得を計算し課税を受ける(これを「総合課税」といいます)ことになります。

この「雑所得」を計算するうえでの「必要経費」相当額は複雑な計算が必要になります。

そのためほぼ間違いなく保険会社から届く「支払通知書」などの用紙に確定申告の際に必要となる「必要経費相当額」について記載されているはずですので、ご確認ください。

万一記載がない場合でも保険会社に問い合わせれば教えてくれますので、必ず確認するようにしましょう。

保険料を外貨で支払っていた場合 

最後に、レアなケースですが既に外貨預金をお持ちだったなどの理由で保険料を米ドルや豪ドルなどの外貨で払い込んでいた場合は、これまで説明した受取時の税金以外にも保険料支払い時の確定申告が必要になります。

外貨預金は通常解約して円転(円に戻す)する際に、為替差益に対して「雑所得」として課税を受けることになります。

ですが、払い出しをして円に換えずに直接「外貨建て保険」などの商品の保険料に充当した場合は、

保険料を払い込んだ日と、外貨預金を預け入れた日の為替レートの差で為替差益を計算して確定申告が必要になりますのでご注意ください。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

「外貨建て保険」も税金の仕組みは基本的には円建て保険と同じ取り扱いです。

保険料の負担者と受取人が異なる場合には、

原則「贈与税」で、負担者が亡くなった場合のみ「相続税」

保険料の負担者と受取人が同じ場合には、

一括受取なら「一時所得」、分割受取なら「雑所得」となります。

こう考えるとけっこうシンプルで理解しやすいと思います。

「外貨建て保険」も使い方次第では「運用」の良い選択肢となり得ます。

税金のことも正しく理解してご活用いただければ、より賢い「出口戦略」がとれるのではないでしょうか。

最後までお付き合いありがとうございました。

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ABOUT US
うーざん
旧帝国大学の経済学部を卒業後、大手地方銀行に就職。法人融資、個人への資産運用アドバイス、相続対策等の業務に従事。 より顧客の近くで仕事をしたいと一念発起し銀行を退職。会計事務所に就職し、お金にまつわる様々な顧客の悩み解決に向け日々活動している。 またファイナンシャルプランナー資格と保険販売資格も保有しており、顧客の保険見直しなどの悩み相談にも乗っている。