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はじめに
こんにちは、お金のよろず屋管理人のうーざんです。
平均寿命が延び、「老後」がだんだん長くなってきています。
「人生100年時代」なんて言い方をされたりもしますが、最新のデータによると平成30年の「平均余命」は全年齢で前年より上昇しており、年々寿命が延びていっていることがデータからも窺えます。
こうした平均寿命の延びなどにより、社会保障関連費用は年々増加を続けています。
新たな政策を行わないと仮定した場合、年齢などの延びによる「自然増」分だけで、年間の社会保障関連費用の増加分は5,000億円を超えます。
このような状況下でただただ将来の年金をあてにしていることはできません。
今の年金制度は「賦課方式」といって、自分が払った年金が将来の受取の為に積み立てられているわけではありません(昔は積立方式でしたが)。
ですから、いくら年金を納めていても自分が果たしてどれくらい年金を貰えるのかはなんともいえないところです。
そこで今回は、「自分の年金は自分で積立てよう」ということで、民間の保険会社などで提供する「年金保険」についてご紹介すると共に、加入すると実際いくらくらいトクをすることになるのかをシミュレーションしてみました。
シミュレーションでは単に保険会社に預けて将来増える分だけではなく、支払時と受取時の税負担にも着目して細かくシミュレートしています。
現役会計事務所職員である筆者が一生懸命検証してみましたので、是非とも最後までお付き合いください。
尚、「運用」しながら「生命保険料控除」をうけて節税メリットを享受できる「外貨建て保険」についてはこちらの記事で詳しく解説していますのでこちらも是非あわせてご確認ください。
年金保険とは
はじめに「年金保険」がどのような商品かおさらいがてら見ていきましょう。
「年金保険」とは保険会社などが提供する生命保険の一種です。
損害保険会社が提供する積立傷害保険という年金保険と似た商品もありますが、あとで説明する「個人年金保険料控除」の対象にならないので、今回は生命保険会社の提供する「年金保険」に絞って解説していきます。
毎月いくら(商品によって積立金額は何種類か選べます)という風に積み立てていって、それを60歳や65歳になったときに年金として受取れるというものです。
受取は一括でも可能ですし、5年や10年の分割で年金として受取ることも可能です。
当然保険会社が払い込んだ保険料を運用してくれるため払い込んだ保険料より2%~5%程度(払込期間や商品によって異なります)増えて受取ることができます。
ただ、20年~30年払い込んで2%~5%という増え方ですので単年度の利回りとしてはかなり低いです。
ただ、中途解約さえしなければ元本割れすることはなく将来確定した年金額がもらえますので、そういう意味では公的年金よりは確実に老後資金が計算できますし、わずかとはいえ増えることにもなるので始めるだけの価値はあると思います。
ですが、年金保険にはその他にも税金面で優遇された部分がありますので、その部分について以下で解説していきたいと思います。
一般の生命保険とは別の保険料控除枠がある
個人年金保険料控除とは
「個人年金保険料控除」とは年末調整や確定申告で受けられる「生命保険料控除」の一種です。
通常の「終身保険」や「養老保険」、「定期保険」や「医療保険」などの生命保険とは別枠で「個人年金保険」単独の控除枠があるのです。
これまで年金保険の契約が無い方が、月に7,000円以上の個人年金保険を新たに契約した場合、
毎年4万円(上限4万円)の生命保険料控除を追加で受けることができます
「医療保険」などと「年金保険」が決定的に違うところは、
払い込んだ額以上の年金が将来確実に受け取れる(中途解約や保険会社が破たんした場合などは除く)
という点です。
それに加えて、一般の生命保険料控除などとは別枠で控除枠が貰えるのですから非常におトクだといえます。
生命保険料控除の制度についてもっと詳しく知りたい方は国税庁 生命保険料控除のページをご覧ください。
個人年金保険料控除でどのくらい税金が安くなるか
さて、他の生命保険とは別枠で控除が受けられることは分かりましたが、では実際「いくら税金が安くなる」んでしょうか?
サラリーマンの方の場合
まずはサラリーマンの方の場合をみていきましょう。
前提条件は以下の通りです
- 会社員、共働き(配偶者控除なし)、子どもなし
- 社会保険料は月給と賞与の金額のバランス、年齢、またお住まいの都道府県や勤務先などにより同じ年収でも金額が変わってしまうため、年収の15%(大体それに近くなります)として計算
- 節税額の算出で復興特別所得税は考慮していませんが、金額はほとんど変わりません
- 節税額の表示は所得税と住民税の軽減額を合計したものです
加入後の節税額 | |||
年収 | 月1万円 | 月3万円 | 月5万円 |
年収400万 | ▲ 6,000 | ▲ 6,000 | ▲ 6,000 |
年収600万 | ▲ 8,000 | ▲ 8,000 | ▲ 8,000 |
年収800万 | ▲ 12,000 | ▲ 12,000 | ▲ 12,000 |
年収1000万 | ▲ 12,000 | ▲ 12,000 | ▲ 12,000 |
年収800万円と1,000万円の場合の節税額がまったく同じになっていますが誤りではありません。
節税額はその方の税率によって変わってくるのですが、年収800万円と1,000万円では社会保険料などを控除したあとでは同じ税率区分になるケースが多いため節税額も同じになるのです。
自営業もしくは副業収入などのある方
続いては自営業の方のケースです。
近年はサラリーマンの方などでも、副業収入があって確定申告をされている方も多いと思いますのでその場合はこちらをご覧ください。
前提条件は以下の通りです。
- 確定申告を行っている方で表の課税所得は各種控除適用後の数値
- 確定申告書「第一表」と書いてある紙の右上㉖のところに記載されているのが課税所得です
- 節税額の算出で復興特別所得税は考慮していませんが、金額はほとんど変わりません
- 節税額の表示は所得税と住民税の軽減額を合計したものです
加入後の節税額 | |||
課税所得 | 月1万円 | 月3万円 | 月5万円 |
200万円 | ▲ 6,000 | ▲ 6,000 | ▲ 6,000 |
400万 | ▲ 8,000 | ▲ 8,000 | ▲ 8,000 |
600万 | ▲ 12,000 | ▲ 12,000 | ▲ 12,000 |
800万 | ▲ 13,200 | ▲ 13,200 | ▲ 13,200 |
1000万 | ▲ 17,200 | ▲ 17,200 | ▲ 17,200 |
個人事業主でいう所得は「収入ー経費」で求められますので個人事業主の課税所得600万円はサラリーマンの方でいうと年収800万円~1000万円の方と同じくらいの課税所得になります。
ですから、得られる節税効果もサラリーマンの方の年収800万円~1000万円の方と同額になっていますね。
これをみてお分かりいただけたように、最低月1万円(厳密には6,700円)以上の掛金であればそれ以上はいくら増やしても節税額は同じになります。
これは「個人年金保険料控除」の上限が年間で4万円までとなっており、4万円の控除を取るためには年間で8万円以上の保険料を払い込めばいいからです。
あとは所得が高くなるほど税率が高くなるため節税額が増えていく仕組みです。
年金受取時の課税について
個人年金保険の受取時の課税はどうなっているのでしょうか?
結論からいえば、
最近加入した個人年金保険で受取時に税金(所得税)が課されることはほとんどありません。
個人年金保険は所得区分でいうと国民年金や厚生年金と同じ「雑所得」という区分で課税されることになります。
受取時の所得計算において、これまで払い込んだ年金保険料を受取期間で按分した数値が所得計算上の経費となるため、確定申告が必要となる給与・年金以外の「年間所得20万円」を超えることはまずないからです。
今の利率でいくと月3万円の払い込みを30年間続けたとして、受取時に増える金額は40万~50万程度です。これを払込期間の30年で割るとせいぜい年間1万円ちょっとです。
分割で受取った場合は5年受取としてもせいぜい年間の所得は10万円以内ですから問題ありません。
また、一括受取の場合は「一時所得」として課税を受けることになるのですが、この場合他に「一時所得」に該当する生命保険の満期金などが同じ年になければ
払込掛金の総額と受取額の差が50万円以内であれば税金はかかりません。
ただし、普段から確定申告をされている方や、「住民税」の確定申告については必ず確定申告が必要になりますのでご注意ください。
そのことについては以下の記事で詳しく解説していますので、こちらも是非あわせてご確認ください。
結局どのくらい得になるのかシミュレーションしてみた
これはある生命保険会社の商品に加入した場合、実際いくらくらいおトクになるかシミュレーションしたものです。
前提条件
- 35歳会社員・配偶者あり・子どもなし
- 年収600万円
- 月3万円を30年間(65歳まで)払込
- 年金は65歳から74歳までまで10年間で受取
- 年収は今の年収が将来も続くと仮定して作成
累計払込保険料① | 年金受取額合計② | 節税額累計③ | (②+③)-① |
1,080万円 | 1,124万円 | 24万円 | 66万円 |
※住民税の申告により毎年4千円ほど住民税が増えることがあります
35歳の方の場合、今から月3万円ずつ積んでいけば、65歳から毎年112万円の年金が受け取れることに加えて、累計で24万円の節税効果も享受できます。
掛け込み期間が長くなれば長くなるほど節税効果も高くなるため、始めるなら早い方がおトクになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「自分の年金を自分で準備する」というコンセプトの商品である「年金保険」ですが、積立による運用効果(しかも元本割れしない)だけではなく、節税効果も享受できるため預金などで運用するのであれば確実に年金保険の方がオススメといえます。
ですが、節税効果の大きさという点では個人型確定拠出年金制度「iDeCo」に分があります。
「iDeCo」では掛金の全額が所得控除となるため、場合によっては年金保険の数倍の節税効果を享受することが可能になります。
ですが、「iDeCo」には管理手数料などの手数料が発生したり、運用商品によっては元本割れのリスクがあったりと、それぞれメリット・デメリットがあります。
個人型確定拠出年金制度「iDeCo」については、こちらの記事で詳しく解説していますので、こちらも是非あわせてご確認ください。
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