この記事の目次
はじめに
こんにちは、お金のよろず屋管理人のうーざんです。
サラリーマンの方が行う3大確定申告といえば、
- 医療費控除の申告
- ふるさと納税の申告
- 住宅ローン控除(初年度)の申告
ではないでしょうか。
そこで本日は「医療費控除」の確定申告についてお話していきたいと思います。
「医療費控除」の対象は意外と広いです。対象になる医療費をきちんと理解しておかないと、せっかくの税金還付の機会を逃してしまうことになってしまいます。
本記事では医療費控除の対象となる支出や、税金が安くなる仕組みなどについて現役会計事務所職員である筆者が解説していきたいと思います。
尚、ふるさと納税の確定申告と住宅ローン控除の確定申告については、以下の記事で詳しく解説していますので、そちらもあわせてご確認ください。
医療費控除の概要
医療費控除の対象となる支出
医療費控除の対象となる支出は以下の通りです。
- 医師または歯科医師の診療や治療に対する自己負担額(妊娠・出産などに伴うものも含む)
- 治療または療養のために必要となる医薬品購入の自己負担額
- 病院の入院・手術代などの自己負担額
- 介護施設などに支払う金額のなかで一定のもの(領収書に対象額が記載されています)
- 鍼灸や、あん摩、柔道整復師などの施術の対価で治療のために必要なもの
- 通院などの要した公共交通機関等の運賃(自家用車は除き、タクシーも原則不可)
- 義手・義足、松葉づえ、補聴器などで医師などの指示・指導に基づき購入した購入費用
- 6ヶ月以上寝たきりの場合のおむつ購入費用(医師の証明書が必要)
- その他国税庁が定める治療などに要する一定の費用
詳しくは国税庁 医療費控除の対象となる医療費に記載されていますので、ご確認ください。
④や⑤あたりまでは、ご存知の方も多かったのではないでしょうか。
しかし、⑥の通院にかかる公共交通機関の運賃や、⑦の義手・義足や補聴器などについては今回初めて知ったという方もいらっしゃると思います。
⑥も頻繁に通院するとバカにはならない金額になりますし、⑦などは一度でかなり高額の支出を強いられることになってしまいます。
⑥の公共交通機関の運賃などはバス代など領収書が発行されないものについては、家計簿やメモ書きなど支出日と支出金額が分かるものを添付すれば控除が受けられます。
またタクシー代については原則対象外ですが、妊娠時の通院や、緊急時及び公共交通機関が利用できない時間・地域などであれば対象となります。
もらさず医療費控除を適用したいところですね。
今は令和1年の確定申告受付期間となっていますが、万一平成30年以前にこれらの支出があり医療費控除の適用が漏れていたという方も大丈夫です。
最大5年間は確定申告をして払いすぎた税金を取り戻すことができますので、この記事を読み終えたらすぐに確定申告しちゃいましょう。
詳しくはこちらのページをご確認ください。
医療費控除の対象とならないもの
続いては医療費控除の対象と「ならない」支出は以下の通りとなります。
- 対象となる金額の内、生命保険や健康保険などで補填された金額
- 入院した際の病衣代やその他身の回り品の購入代など治療のための支出以外のもの
- 本人や家族の希望で個室や少人数の部屋に入った場合の個室料(いわゆる差額ベッド代、病院の都合による場合は対象となります)
- 医師や看護師への個人的なお礼(心付けなど)
- 鍼灸やあん摩、柔道整復師、整体師などに支払う費用で、疲労の回復など治療以外の目的で行われたもの
- 医薬品などの購入対価のうち美容や予防目的など治療のために直接必要ではない額
- 入院・手術代などで美容目的など治療以外の目的のための支出(美容整形など)
- 歯科医師による治療のうち、いわゆる審美歯科など美容目的のもの(子どもの発達段階における歯科矯正などの費用は医療費控除の対象となります)
要するに医療費控除の対象となる支出は「治療のために要した費用」かどうかで判断されることになります。
治療目的以外の「予防」や「健康増進」、または「美容目的」などの場合には対象となりませんのでご注意ください。
対象となる家族の範囲
医療費控除は「自己又は生計を一にする親族」のために支出した費用が対象になることとされています。
この「生計を一にする親族(せいけいをいつにするしんぞくと読みます)」というのは税法で頻繁に出てくる表現になります。
扶養控除の対象となる親族についても「生計を一にする親族」で所得が38万円以下の方、となっています。
さて、この「生計を一にする」という意味ですが、
要するに
「生活に必要となるお金や物資」を共同で使っている
という状態を表します。
すなわち同居していることは必ずしも求められないので
- 遠方の学校で単身生活をしている子ども
- 治療などのために病院や施設に入居している親族
などであっても、学費や生活費、療養費などを共同して負担していることが明らかであれば「生計を一にする親族」となりますので、これらの方に支払った医療費はすべてどなたか一人の確定申告で「医療費控除」として申告することができます。
尚、この場合のどなたか1名は一番税率の高い方(所得が多い方)で行うのがセオリーですので「世帯主」など戸籍上の関係で決める必要はありません。
またその年によって所得が変動することもありますので、去年はお父さんで「医療費控除」を適用したけど、今年はお母さんで申告するということもできます。
また「親族」の範囲は
- 6親等以内の血族
- 3親等以内の姻族
となっていますが、具体的にいうと配偶者の叔父叔母や自分のひいひいおじいちゃんの兄弟姉妹まで含まれるということになりますので、およそ一般に「親戚」と呼ぶような関係性の方はすべて含まれると思ってまず間違いありません。
ちなみにもっと詳しく知りたいという方は国税庁 扶養控除というページのQ8の部分に家系図が載っていますので参考にしてみてください。
医療費控除の計算方法
医療費控除の対象金額
医療費控除の対象となる支出については先ほどご説明したとおりです。
しかし、対象となる支出のすべてが控除できるわけではありません。
医療費控除の対象となる金額は支出した金額から下記の金額のいずれか少ない金額を引いた金額になります。
- 10万円
- その年の所得金額 × 5%
所得金額が「200万円」を超えている場合は必然的に10万円になります。
基本的には医療費控除は「10万円を超えた金額」が控除になる
と覚えておきましょう。
医療費控除で安くなる(還付される)税額
さて、私も仕事でお客様の医療費控除の申告を行うことも多いのですが、医療費控除を適用したことで安くなる税額をお伝えするとけっこうな確率で驚かれたりします。
ご本人が思うほど税金は安くなってないみたいなんです。
理由は2つあります。
- そもそも医療費控除の対象額が10万円を引いた後の金額だから
- 安くなる税額は「控除額×税率」で求められるから
①については例えば年間で15万円の医療費支払があった場合、本人的にはかなりの医療費を支払った感覚があります。
実際に仕事柄よくわかるのですが、家族分すべて合わせても10万円を超える医療費を支払うときというのは大体何かあったときです。
どなたかが入院や手術をされたか、お子さんなどの歯科矯正をしたときなど普段とは違う「イベント」があったときしか10万円を超えないものです。
それなのに実際の控除額は
15万円 - 10万円 = 5万円
にしかならないので、本人の「医療費をたくさん支払った!」という感覚とのギャップが出てしまい、意外と控除額が少ないなという感覚になってしまうようです。
2つめの理由②安くなる税額は「控除額×税率」で求められるからについては、具体的に計算してみたほうがわかりやすいと思いますのでまずはこちらの表をご覧ください。
課税される所得金額 | 税率 |
195万円以下 | 15% |
195万円超 330万円以下 | 20% |
330万円超 695万円以下 | 30% |
695万円超 900万円以下 | 33% |
900万円超 1,800万円以下 | 43% |
1,800万円超 4,000万円以下 | 50% |
4,000万円超 | 55% |
所得ごとの税率表(所得税+住民税)になります(復興特別所得税は考慮していません)。
医療費控除で安くなる税金は「医療費控除の額×上表の税率」で求めます。
例えば、所得400万円の方が先ほどの15万円の医療費を支払った場合、
(15万円 - 10万円) × 30% = 1万5千円
が安くなる税金の額になります。
税率が高い方の場合はもう少し恩恵が大きくなりますが、仮に所得1,000万円の方でも、
5万円 × 43% = 21,500円
が安くなる税金の額になります。
15万円の医療費を負担して、1万~2万円程度の税額が安くなるというイメージですね。
何となく驚かれるイメージがお分かりいただけたでしょうか?
まとめ
いかがでしたでしょうか?
通常の医療費控除で受けられる恩恵は、大体1万円から2万円台といったイメージです。
ただし、補聴器や義足などの大きな出費があった場合には特に確実に医療費控除の適用を行うようにしましょう。
仮に補聴器で30万円、他の医療費で10万円の支出があったとすると所得400万円の方で9万円の還付が受けられることになります。これは大きいですね。
医療費の対象となる支出について確実におさえて、もれなく申告できるようにすれば思わぬところで還付が受けられますよ。
最後までお付き合いありがとうございました。
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