FRBがついに禁じ手のハイイールド債購入へ【元銀行員が今後の見通しを解説】

はじめに

こんにちは、お金のよろず屋管理人のうーざんです。

4月9日にアメリカFRB(連邦準備制度理事会、日本でいうところの日銀)が、資金調達難にあえぐ企業の救済策と債券市場における混乱の沈静化を図るため、

最大250兆円規模の追加緩和策を発表しました。

このなかで目玉とされているのが、「投資不適格級」の社債、いわゆるハイ・イールド債の購入です。

この決定を受けて、翌日の米国社債市場では1998年以来およそ22年振りの値上がりをみせました。ひとまずは市場は落ち着きを取り戻しつつあるようです。

本記事ではこの施策の目的を探るとともに、今後の市場への影響を検討してみたいと思います。

ハイ・イールド債とは

ハイ・イールド債というのは「投資不適格級」とされる格付けが低く利回りが高い債券のことをいいます。

「投資不適格級」というのは文字通り、

投資には適さない=投機的

とされる信用度合の企業のことをいいます。

一般に格付で「BBB」格までが「投資適格=投資対象としてそれなりに安心できるよという信用度合」とされています。

日本企業でいうとゼンショーHD(すき家の運営会社)や、タカラトミーなどがこのBBB相当の格付になります。

これらの企業と同等か、それ以上の信用力であれば「投資適格級」であるとされています。

ちなみに「投資不適格級」とされるBB̟⁺の企業にはシャープ日本板硝子などがあります。

こうした「投資不適格級」の企業が発行する社債のことを、ハイ・イールド債というのです。

ハイ・イールド債のことを別名「ジャンク債(直訳するとクズ債)」といいます。いつ紙くずになってもおかしくない債券、といったところでしょうか。

格付はいずれも令和2年4月13日現在のJCRによる格付です

ハイ・イールド債については、こちらの記事でも詳しく解説していますのでこちらも是非あわせてご確認ください。

ハイイールド債に潜むリスクとは?【価格急落の原因を元銀行員が解説】

なぜFRBはなぜ「禁じ手」に踏み切ったのか

なぜFRBは「禁じ手」と言われていた「ハイ・イールド債」の購入に踏み切ったのでしょうか?

実は今回の買い入れ対象になっているのはあくまでも

“3月22日以前にBBB以上の格付=投資適格級であったが、その後の格下げによって投資不適格級となった企業”

のみです。

この度のコロナショックで業績悪化懸念などにより、格下げを食らってしまった企業でも直前まで投資適格級を保っていた企業の資金繰りを救済するため、今回のような措置に踏み切ったのです。

今回の買い入れ対象には3月25日にBB⁺に格下げされた大手自動車メーカーの「フォード社」も含まれています。

実は社債の主要な買い手である「機関投資家=投資ファンドや年金基金、金融機関などプロの投資家」の多くは、規約により「投資適格級」の債券しか保有できないことになっています。

投資家から資金を預かって運用している以上、「投機的な」運用はできないからです。

そのため「BBB」以下に格下げされた企業の社債は、こうした機関投資家たちの投げ売り(ルール上売らざるを得ない)にあってしまうため、社債価格が大暴落(スプレッドは暴騰=アメリカ国債金利への上乗せ金利で自社の社債の金利を表します)します。

社債が大暴落すると、買い手がつかなくなるためたちまち資金繰りが苦しくなってしまいます。

大企業というのはCP(コマーシャルペーパー)といわれる1か月以内の社債のようなものを発行して短期の資金繰りを回しているため、

社債価格が暴落するとCPの買い手がつかず急速に資金繰りが悪化してしまうのです。

そのためこうした企業の資金繰りを救済するために、直前まで投資適格級だった企業の社債をFRBで買い支えることで、スプレッドの悪化を防ぎますよ

というのが今回の買い入れの目的です。

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今後市場はどうなっていくのか

FRBの買い支えによっておよそ22年振りの上げ幅を記録するなど、落ち着きを取り戻しつつある米国のハイ・イールド市場ですが、今後の行方はどうなっていくのかを検討してみたいと思います。

今回の買い入れ対象となった企業については、ひとまずは安心といえるでしょう。

ハイ・イールド市場全体がFRBの今後の買い入れ期待から大幅に持ち直しているため、個人投資家の一部も再び買いに入る動きもみられます。

一方で懸念が2つあります。

1つめが「今回の買い入れ対象となっていない企業」、すなわち3月22日以前から「投資不適格級」だった企業の社債です。

極端な話わずか数日の差でも対象とならない企業もあると考えられ、これらの企業については買い入れ対象から漏れた失望売りも重なり、さらに厳しい状況となっていくでしょう。

2つめが「今は対象となっているが、今後対象外となる企業」、すなわち今後更なる格下げによってBB格未満に転落してしまう企業です。

今回の買い入れ対象企業は、

  1. 3月22日以前は投資適格級だった
  2. 買い入れ時点でBB格以上の格付であること

の2点が要件となっています。

そのため今後の格下げによりBB格を下回ってしまった場合には、買い入れ対象から外れてしまうため再びスプレッドが大幅に上昇してしまう可能性が極めて高いです。

FRBの買い入れ対象や政府保証の対象となるかで、その後の社債価格の行く末が大きく変わってしまいます。

同様の現象は、リーマン・ショックのときや先日のFRBによる緩和策発表の際にもみられました。

今回は前回の緩和策で対象とならなかった「ハイ・イールド債」のスプレッドが大幅に悪化して急速に資金繰りに懸念が生じていることから、

あえて禁じ手ともいえる「ジャンク債」の購入に踏み切ったという背景があります。

したがって今回対象にならなかった企業の社債は、前回の緩和策で対象外となった「ハイ・イールド債全体」と同様に、スプレッドが大幅に悪化するという事態が待ち受けている可能性が高いのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

FRBとしても自身の健全性と市場の安定の両立が求められるため、買い入れ対象には一定の線引きが必要です。

前回の緩和策から漏れたフォード・モーターの資金繰りが急速に悪化したように、今回の買い入れ対象から漏れた企業の資金繰りには注意が必要です。

またこうした企業のスプレッド悪化から、再び「ハイ・イールド債市場全体」への飛び火という事態も考えられるため、予断を許さない状況といえます。

「ハイ・イールド債」のように「低格付け=ハイリスク」で「利回りが高い=ハイリターン」の投資先というのは、悪材料が出たときに真っ先に資金が逃げ出します。

そのため現在のようなマーケット状況では、投資経験があまりないという方は手を出さない方が良いでしょう。

以上、最後までお付き合いありがとうございました。

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ABOUT US

旧帝国大学の経済学部を卒業後、大手地方銀行に就職。法人融資、個人への資産運用アドバイス、相続対策等の業務に従事。 より顧客の近くで仕事をしたいと一念発起し銀行を退職。会計事務所に就職し、お金にまつわる様々な顧客の悩み解決に向け日々活動している。 またファイナンシャルプランナー資格と保険販売資格も保有しており、顧客の保険見直しなどの悩み相談にも乗っている。