原油価格史上初のマイナス圏突入で今後の見通しは!?【元銀行員が解説】

原油価格暴落

こんにちは、お金のよろず屋管理人のうーざんです。

4月20日の原油価格先物取引市場で史上初のマイナス値での取引となり、市場関係者からは驚きの声が聞かれます。

そこで今回は、

原油価格がマイナスになる(=買う側が原油とお金を貰う)ってどうして?

今後も原油価格はマイナス圏が続くの?

私たちの生活への影響は?

といったお悩みについて、元銀行員である筆者が解説していきたいと思います。

原油価格がマイナスってどういうこと?

そもそも価格がマイナスとはどういう意味でしょうか?

通常はパン1個100円だとすると、100円を「払って」パンを買いますよね。

これが価格がプラス(普通)の状態です。

一方パン1個(本記事ではマイナスを▲と表記します)▲100円だとすると、100円を「貰って」パンも貰います。

これが価格がマイナスの状態です。

なぜこんなことが起きるのでしょうか?

これはそもそも石油市場というのは、いわゆる実需筋(本当に石油を使いたくて欲しい人)よりも、

投機筋(将来の値上がりを期待して価格差で利益を取りたい人、俗な言い方をすれば転売屋)の方が多いためにこのようなことが起こるのです。

石油が欲しいわけではないけど、転売して利益を得たい

という人がたくさんいて、半年とか3か月くらい前に、5月とか6月頃に買う権利を買っておいて、その間に石油価格が値上がりしたら転売しようとしていました。

そこに突然の世界的なコロナショックによって、生産活動や自動車・飛行機での移動などが激減したため、石油の需要が大幅に減ってしまいました。

それに加えて3月末でOPEC(石油輸出国機構)やロシアなどの産油国同士での「協調減産(協力して生産を減らして価格を一定以上に保ちましょうという取り決め)」が終了したこともあり、

原油価格が暴落し、まして実需筋も大幅に減ってしまったため原油の引取り手がいなくなったのです。

今回マイナス値での取引となったのは、5月に受渡しをする原油です。その取引期限が4月21日だったために、このままだと原油を実際に引き取らなくてはいけない「投機筋」の人たちが、

お金を払ってでも「実需筋」の人たちに買い取って欲しいと考えたために史上初めてマイナス値での取引が成立したのです。

4月21日の取引期限までに誰かに転売できなかった場合、自分が石油を買わなければいけなくなってしまいます。

石油を買ってしまうと、現物を取引場所(今回はアメリカ)まで引取りにいかなければならないうえ、その原油をどこかに安全に保管しておかなければなりません。

「投機筋」の人は当然そのような保管施設を保有していないため、保管料を払って保管してもらわなければなりません。

しかも「実需筋」の人たちも今回のコロナショックによる経済停滞で、思ったように在庫が捌けないため保管施設もそれほど空きがない状態です。

そのため高額な保管料を払っていつ売れるかもわからない原油を保管し続けるくらいなら、先物市場の取引期限までにお金を払ってでも誰かに引き取ってもらいたい、

というわけで今回のような事態が起こったのです。

先物市場の仕組みや原油市場の仕組みについては、下記の記事でも詳しく解説していますのでこちらも是非あわせてご確認ください。

コロナで原油大幅下落!原油価格変動の仕組みとは?【元銀行員が解説】

今後もマイナス値での取引は続くか?

今後もマイナス値での取引は続くのでしょうか?

答えは、

いったんはプラス圏に転じるが、6月渡しの取引期限が近づいたタイミングで再びマイナス圏に転落する可能性は十分にある

といったところになります。

今回マイナス値での取引となったのは、あくまでも5月渡しの原油だけです。

5月ものが史上初めてマイナス値となった4月20日の取引においては、プラス20ドル程度で取引されています。

この価格自体も数カ月前の水準からみれば半値以下ですので、十分暴落といえますがそれでもまだプラス圏では取引されています。

ちなみに4月21日のNY原油先物市場では6月渡し分が11ドル台と大幅に下げています

5月からはOPECなどは世界供給量の1割程度を「協調減産」することで合意していますが、市場ではすでに「焼け石に水」との声が大きく、

価格を下支えするには弱いでしょう。

私たちの生活と金融市場への影響は?

生活への影響

生活への影響
  • ガソリンや灯油などの燃料価格が安くなる
  • 飛行機の国際線搭乗時の燃油サーチャージ(燃油価格に連動する付加的な運賃)が安くなる
  • 石油元売りなど一部企業を除いて短期的な企業業績にはプラス材料(ただしコロナショックによる経済活動の停滞の影響の方が大きい企業が多い)
  • ガソリンスタンドは売値も下がるが仕入れ値も下がるため、今のところ大きな業績悪化材料ではないが、中期的には粗利減少要因であるためスタンドは減る可能性あり

金融市場への影響

金融市場への影響
  • 特に米国のシェール関連企業の業績悪化が著しく、こうした企業の多くは「ハイ・イールド債(ジャンク債)」などと呼ばれる「低格付の社債」を発行しているため、資金調達が困難となり倒産が増加する懸念あり
  • 上記によって「ハイ・イールド債」市場全体からマネーの逃避が起こり、ハイ・イールド市場そのものが機能不全に陥る可能性あり
  • 産油国の余剰マネーが世界の金融市場に流入し、株高の一要因となっていたが原油安による財政悪化懸念から退避が起こっており、世界の株式市場の下押し圧力となっている

まとめ

原油は「実需筋」よりも圧倒的に「投機筋」のマネーが多い市場です。

短期的な価格変動が大きいことから利ザヤを取りやすいことが要因です。

こうした短期的な利ザヤだけを狙った資金というのは、危機時(リスク・オフ)にはいち早く逃避することが特徴です(短期的な利益追求をしているので当然ですね)。

現物の保管に困難を伴う以上、こうした「投機マネー」が入り込むハードルは上がっているといえるでしょう(取引期限までに誰かに渡さなければいけない時限爆弾のようなものです)。

そのため当面価格の上昇は見込めず、再びマイナス圏への転落も十分にあり得るでしょう。

それ以上に気掛かりなのは米国のシェール関連企業の業績悪化ですね。

先般FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)による「ジャンク債購入」が決まりましたが、こうした企業の大半は買取プログラムの対象となっていません。

そのためますますの価格下落とスプレッドの上昇に悩んでおり、このままではますます倒産が増えることでしょう(すでに倒産している企業もあります)。

ハイ・イールド債(ジャンク債)の基本について知りたいという方は、こちらの記事で詳しく解説していますのでこちらをご覧ください。

ハイイールド債に潜むリスクとは?【価格急落の原因を元銀行員が解説】

「禁じ手」ともいわれているFRBによる「ハイ・イールド債(ジャンク債)」の購入についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

FRBがついに禁じ手のハイイールド債購入へ【元銀行員が今後の見通しを解説】

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旧帝国大学の経済学部を卒業後、大手地方銀行に就職。法人融資、個人への資産運用アドバイス、相続対策等の業務に従事。 より顧客の近くで仕事をしたいと一念発起し銀行を退職。会計事務所に就職し、お金にまつわる様々な顧客の悩み解決に向け日々活動している。 またファイナンシャルプランナー資格と保険販売資格も保有しており、顧客の保険見直しなどの悩み相談にも乗っている。