こんにちは、お金のよろず屋管理人のうーざんです。
本日は「仕組み債(しくみさい)」についてお話していきたいと思います。
皆さんは「仕組み債」って聞いたことあるでしょうか?
一見社債などと同じ「債券」のようですが、「ノックイン」だとか「ノックアウト(早期償還)」だとかよくわからない条項がたくさんついてて、とっても高利回り
という商品です。
でも実は「高利回り」にはもちろん「カラクリ」があって、仕組みをきちんと理解しないで購入すると大変なことになってしまう可能性があります。
特に今のような株式市場が暴落しているときには「ノックイン」条項に抵触していたり、いつするかヒヤヒヤしているという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本日は高利回り商品として人気の「仕組み債」の仕組み(ダジャレじゃないですよ笑)についてお話していきたいと思います。
この記事の目次
仕組み債の概要
そもそも「仕組み債」とはどんな商品なのでしょうか?
仕組み債はカンタンにいうと以下のような設計の商品をいいます。
- 社債や国債などと同じ「債券」の仕組みと
- デリバティブ(金融派生商品)といわれるハイリスクの金融取引を組み合わせた商品で
- 購入者はデリバティブのリスク分、高い利回りを得ることができるので
- マイナス金利下の現在でも、円建てで年利2%前後という高いリターンが得られる可能性がある
要するに「仕組み債」とは「債券」と、「オプション取引」や「スワップ取引」などの「デリバティブ取引(金融派生商品)」を組み合わせた商品です。
この「デリバティブ取引(金融派生商品)」というのは、「ハイリスク・ハイリターン」な取引であるためその取引と「債券」の仕組みを組み合わせることで、
一見すると「ミドルリスク・ミドルリターン」くらいの商品にみえるようにうまく設計されています。
実際、相場が安定して右肩上がりという状況では利回りが高い「魅力的な金融商品」の一面をみせたりします。
「デリバティブ取引(金融派生商品)」、「オプション取引」、「スワップ取引」といきなり専門用語が出てきて「???」となってしまった方、スミマセン(笑)
今順番に説明していきますね。
デリバティブ取引(金融派生商品)とは
「デリバティブ取引(金融派生商品)」とは、「モノ」と「お金」、あるいは「モノ」と「モノ」を今交換する「現物取引」とは異なり、
「将来の不確実性」を取引対象としている点が異なります。
「将来の不確実性」とは、
- 価格の変動リスク
- 需要と供給のリスク(今買わないと手に入らないかもしれないor今売らないと将来は売れないかもしれないetc)
- 流動性リスク(市場に一定数取引参加者がいないと取引が成立しない、少なくともある価格で売りたい人とその価格で買いたい人が1ペア以上いないと取引は成立しない)
などの「将来の不安定さ」のことをいいます。
こうした様々な「将来の不安定さを取り除きたい」という人と、「その不安定さに賭けて一儲けしたい」という人など色々な人の思惑で成り立っているのが
「デリバティブ取引(金融派生商品)」という取引なのです。
「デリバティブ取引(金融派生商品)」には大きく分けて3種類あります。
具体的には、
- 先物取引
- スワップ取引
- オプション取引
の3つです。
以下で簡単にそれぞれの内容についてご説明します。
先物取引とは
先物取引とは、あらかじめ決められた価格で将来の取引を行うことをいいます。
3か月後に大豆を100kg、1万円で購入する
などの約束を取り付けることをいいます。
先物取引には大豆や原油などの商品の他に、日経平均株価などの株価や株価指数などを対象とするものがあります。
尚、先物取引については以下の記事でも詳しく解説していますので、こちらもあわせてご確認ください。
スワップ取引とは
スワップ取引とは、スワップ=交換という言葉の意味通りお互いに同じ価値と思えるものを「交換」する取引のことです。
スワップ取引には色々なものがありますが、代表的なものは以下のとおりです。
- 金利スワップ(変動金利と固定金利、円の金利とドルの金利など)
- 通貨スワップ(円とドル、ドルとユーロなど)
- クレジット・デフォルト・スワップ(CDS、将来のデフォルト=債務不履行リスクを引受る代わりにお金を貰う≒保険のようなもの)
などがあります。
クレジット・デフォルト・スワップ=CDSは、サブ・プライムローン問題というアメリカの住宅ローンバブル崩壊という一国の経済問題を「100年に1度」といわれる世界的な金融危機にまで拡大させた元凶です。
クレジット・デフォルト・スワップについては、こちらの記事で詳しく解説していますのでこちらも是非あわせてご確認ください。
オプション取引とは
オプション取引とは、デリバティブのなかでも一番ややこしいのですが、
あるものを
「買う権利」と
「売る権利」を売買する取引のことです。「オプション」とは「権利」のことです。
「買う権利」のことを「コール・オプション」
「売る権利」のことを「プット・オプション」
といいます。
例えば今、日経平均株価が1万5千円だとして、私はこの日経平均株価指数を購入したとします。
さらに、
3か月後に1万6千円で売る権利
を今100円で買うとします(この取引を「プットオプション(売る権利)」の買いといいます)。
このときに支払った100円のことを「オプション料(オプションの代金)」といいます。
その場合、3か月後に
- 日経平均株価が1万6千円より安かった場合
私は「1万6千円で売る権利(プットオプション)」を持っているので、1万6千円で売ることで
900円の利益(1万6千円ー1万5千円ーオプション料100円)を得ることができます。
逆に
- 日経平均株価が1万6千円より高かった場合(例えば1万7千円だった場合)
私は相場で売った方が得なので、「1万6千円で売る権利」を放棄して相場の1万7千円で売却することにします。
そうするとオプション料100円は無駄になりますが、それでも相場で売却したことで2千円の利益が出ているので問題ありません。
これが「オプション取引」です。
このように「オプションを買った人」は、相場の状況をみて「権利を放棄」することもできます。
それゆえ、「オプション料」という保険料を払っておくことで、損失をそのオプション料の額に限定できるという特徴があります。
一方、「オプションを売った人」の立場に立つとどうでしょうか?
私からみた「3か月後に1万6千円で売る権利」は
相手からみると「3か月後に1万6千円で買う義務」になります。
そうなると3か月後に
- 日経平均株価が1万6千円より安かった場合(例えば1万4千円だった場合)
相手は相場よりも高い価格で購入しなければならないので含み損▲2千円を抱えてしまいます。オプション料でもらった100円を差し引いても▲1千900円のマイナスですね。
- 日経平均株価が1万6千円より高かった場合(例えば1万7千円だった場合)
この場合ふつうの人は1万6千円で売れる権利=プットオプションを放棄して相場で売却するので、オプション料のもらい得になります。
ここまでですでに察しのいい方はお気づきなのではないでしょうか?
そうです、実は「オプション取引」というのは「プットオプション(売る権利)」であろうと、「コールオプション(買う権利)」であろうと、
オプションの買い側の損失はMAXで「オプション料」の範囲に収まる一方、利益は相場次第ですが理論上は無限大です。
一方、オプションの売り手は損失が相場次第で無限大になる一方、利益は最大でも「オプション料」にとどまります。
オプションの売りってめちゃくちゃリスキーだと思いませんか?
でも実は「仕組み債」を購入するということは、「オプションの売り手」になっているということなのです。
仕組み債のメリット
ここまでのお話で「え、仕組み債ってめっちゃリスク高いじゃん・・・」と思われているそこのあなた、正解です(笑)
「仕組み債」はかなりの「ハイリスク商品」であることを理解しておきましょう。
しかし仕組みを理解しておけば、使いどころもあります。
当サイトでは何度もお話していますが、
投資の世界で「リスク」という言葉は振り子の振れ幅のことです。
「ローリスク・ハイリターン」や「ハイリスク・ノーリターン」などといったことはあり得ません。
必ずリスクとリターンは振り子の振れ幅のように同じだけあります(商品の仕組みによっては手数料分などでリターンの方が少なくなることはありますが)。
ということは「仕組み債」にもリスクに見合うリターンがあるはずです。
仕組み債のメリットとはどういったところにあるのでしょうか。
仕組み債のメリットとは、
- 一定の範囲内では元本の変動リスクがない
- 通常の社債などと比べて、高い金利を受取ることができる
という点でしょう。
デリバティブの基となる資産(特定の企業の株や日経平均株価指数など商品によって決まっています)の価格が運用期間中に一度も一定額以下にならない場合には、
通常の「債券」と同じように元本の100%が償還されます。
この一定価格のことを「ノックイン価格」といって、この価格を上回っている限りは元本は100%保証されたうえで、高い金利も受け取れるためこの部分が人気商品たるゆえんです。
「ノックイン価格」の水準は、当初購入額の60%-70%程度で設定されていることが多く、「短期間でそれほど大きく下がることはないだろう」と多くの人が考えることから「ミドルリスク・ハイリターン」の魅力的な商品にうつってしまうのです。
仕組み債のデメリット
続いて「仕組み債」のデメリットはこちらです。
- 運用期間中に一度でも「ノックイン価格」を下回った場合、以降は元本価格が変動し満期時の相場次第では元本割れリスクがある(ノックイン価格に抵触した場合かなりの確率で元本割れする)
- 預入額より一定以上、原資産(デリバティブの基となる資産)の価格が上昇した場合「ノックアウト」といってその時点で即時償還され運用が終わってしまう(この場合、元本は100%で償還)
「ノックイン価格」以下に一度でもなった場合、以降は元本はそのデリバティブの基となる資産(特定の企業の株や日経平均株価指数など商品ごと決められたもの)の価格に連動して元本価格が上下します。
そのため満期時にこのデリバティブの基となる資産の価格が、当初購入額を下回っていた場合には元本割れということになってしまいます。
2つめの「ノックアウト」については、元本割れのリスクはないうえ償還されるまでの期間の金利は受取れるので、そのこと自体は大きなデメリットではありません(せいぜい予定していた金利が得られないという点)。
しかし、「元本100%で償還され、短期間で高金利も得られた」ためかなりの割合の方が、再度同じような「仕組み債」を購入する傾向があります。
通常早期償還(ノックアウト)が発生するようなときは、相場が上昇基調にあるときなので何度か「ノックアウト」を繰り返すことが多いです。
そして購入を繰り返すうちにどこかで相場が反転して「ノックイン」してしまい、元本割れで大損という事態に陥ってしまうことがあります。
「ノックアウト」を繰り返すうちに、「ノックイン」価格も徐々に上昇することになるので最初に購入したときのノックイン価格の2倍というような事態にもなってしまっていたりします。
そのため購入を繰り返すほど「ノックイン」の確率も上がってしまうという事態になってしまいます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「仕組み債」の高利回りの秘密は「オプションの売り」による「オプション料」が投資家に上乗せされているからです。
一方で、
投資家はその「オプションの売り」によって無限の相場暴落リスクを引き受けている
ということをしっかりと理解しておくべきです。
「仕組み債」で失敗するパターンは大体「早期償還(ノックアウト)」を繰り返すうちに「思考停止」してしまい、いつの間にか「早期償還(ノックアウト)」が前提になってしまっているケースが多いです。
ノックアウトを複数回経ると
「どうせ3か月や半年で早期償還されるだろう」という思い込みが醸成され、
「そんな短期間に30%も40%も相場が暴落するわけがない」と考えてしまうようです。
「オプションの売り手」には解約権がない
ということも頭に入れておくべきでしょう。
相場が反転したときでも、あなたには逃げる権利がないのです(オプションを売るとはそういうことです)。
ぜひともリスクとリターンの仕組みをきちんと理解したうえで、投資を行うようにしましょう。
そして「投資の鉄則」は
「自分が仕組みを理解できないものには投資しない」
ことです。
以上、最後までお付き合いありがとうございました。
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「iDeCo(イデコ)」、「つみたてNISA」、「ドル・コスト平均法」については、以下の記事で詳しく解説していますのでこちらも是非あわせてご確認ください。