この記事の目次
はじめに
こんにちは、お金のよろず屋管理人のうーざんです。
FRBことアメリカの連邦準備制度理事会(日本でいう日本銀行にあたるところです)が、現地時間の3日に緊急で0.5%の利下げを実施しました。
新型コロナウイルスの感染が世界で拡大しており、世界的な景気後退が懸念されるなか景気の下支えを行いたいとの思惑から異例の緊急利下げとなりました。
利下げ自体は既にFRB議長であるパウエル氏によって事前に示唆されていたため市場は利下げを織り込み済みだったとはいえ、利下げ発表にも関わらず3日のNYダウ株式市場は前日比▲785ドルの大幅下落で取引を終えたことは驚きをもって受け止められました。
前日に過去最大の上げ幅となる1,293ドル超の上昇を記録した反動もあるとはいえ、0.5%もの利下げ(通常FRBの金利変動幅は0.25%ずつのことが多いです)を行ったにも関わらず、なぜ市場はこれほど冷淡な反応だったのでしょうか?
そもそも「利下げ」を行うと一般に株式市場は好感し上昇することが多いのですが、それなどうしてなのでしょうか?
そこで今回は、「利下げ」とはそもそも何か、どういった効果があるのか、また今回はどうして利下げに対して市場は大幅下落という結果で応えたのかなどについてお話していきたいと思います。
利下げとは何の金利を下げるのか?
そもそも「利下げ」とは何の金利を下げることを指すのでしょうか?
一般に各国には「政策金利」とよばれるその国で用いられる預金や貸出など様々な金利の指標となる金利があります。
日本では「無担保コール翌日物」といわれる銀行間の超短期(1日だけの借入)の金利が一応「政策金利」の役割を果たしています。
一応といったのは、今の日本銀行の政策は市中に出回るお金の量(マネタリーベース)をコントロールすることにより行うこととされているからです。このあたりの話はそのうちに機会があればお話できればと思いますが、とりあえず今は横に置いておいてください。
この「政策金利」がアメリカでは「FF(フェデラルファンド)金利」といわれる、これまた銀行間の資金の貸し借りに用いられる金利を操作することで景気の調整を行っています(正確には行おうとしています)。
この金利を今回0.5%引き下げたのですが、それが意図したほど市場から良い反応が得られなかったというのが今回の出来事です。
利下げをするとなぜ株価が上昇するのか
今回は思惑が外れ株価は下落しましたが(ただし発表当日は下がりましたが、前日に過去最大の上げ幅を記録したので実際は株価は上昇したともいえます)、どうして一般に「利下げ」を行うと株価が上昇するのでしょうか?
中央銀行が「利下げ」を行うのは一般に景気を刺激して上向かせたい局面になります。
預金や貸出など様々な金利の指標となっている政策金利の「利下げ」を行うと、世の中の色々な金利が下がります。
金利が下がると、企業は借入を行って投資をしやすくなりますし、個人もローンなどを組みやすくなるため消費行動も活発化します。
日本では金利が下がったからといって個人の消費活動がただちに活発化するイメージはあまり湧かないかもしれませんが、アメリカでは個人がふつうの買い物でローンを組むショッピングローンやクレジットが盛んです。
そのため
- 政策金利が下がることで企業や個人の消費活動が活発化し
- 「景気が上向く」と考えられるため
- 市場はそのことを期待して株を買うために株価が上昇する
という構図で株価が上昇するのです。
また少しうがった見方をすると、元々はこうした構図があったのですが、近年では「利下げ=株は買い」という方程式が出来上がっているためにほとんどノーロジックで株価が上昇する側面もあります。
この方程式については一般投資家はもちろんですが、市場でかなりの取引ボリュームを占めるようになってきた機械的に大量の株式購入や売り注文を出す「高速取引システム」が利用されるようになってきて、
円高=日本株売り
利下げ=株買い
のように予め一定の条件で株を売ったり買ったりするシステムが組まれていることもこうした動きに拍車をかけています。
また、「利上げ」局面ではこれとは逆に金利が上昇することで企業や個人の経済活動が抑制されることが期待されるため景気が過熱しすぎて「バブル」化するのを防ぐ
という役割があります。
そのため企業業績などが停滞することが予想され、株は売られることが多くなります。
中央銀行の限界~金融政策だけで景気をコントロールできるか~
さて、ここまでは
- 「利下げ」とはそもそも何か
- 「利下げ」でなぜ株価が上昇するのか
の2点についてみてきました。
ここからは、「利下げ」でどこまで景気を刺激できるかについてみていきたいと思います。
先ほどの繰り返しにはなりますが、「利下げ」には
- 世の中の預金や貸出金利を引き下げ
- それによって経済活動を活発化させる
という役割があります。
しかし、いくら金利が安くなっても
それが必ず企業や個人の経済活動を活発化させる
とは限らないのではないでしょうか?
たとえばいくら金利が安くなっても、
人口が減少しはじめている日本で企業が工場などの生産設備を増強する・・・などの事例が全国的にたくさん起こるでしょうか?
例えば、クレジットカードのリボ払いの金利が安くなったからといって、
個人が借金をしてまでブランド品を買いあさるでしょうか?
今は「サブスクリプション(通称サブスク)」といってなんでも定額性で利用し放題、所有しないのが当たり前という時代になってきています。
実際ブランド品や時計なども月数千円で借りたい放題というサービスも出てきています。
こうした状況でいくら金利だけを下げても、景気を刺激する効果には限界があると思いませんか?
また今回のFRBによる利下げが不発に終わったのは、新型コロナウイルスによって中国をはじめとした世界中の製造工場などが製造をストップしたり稼働が低下している状況で、
どれだけ金利を安くしても当面景気の停滞は続くだろうとの見立てから、市場が冷淡な反応をみせたと考えられます。
実はここが中央銀行単独での景気コントロールの限界なのです。
金利の上げ下げだけで実体経済を動かすことには限界があります。
そのため政府が一体となって「経済政策」を行っていく必要があるのですが、アメリカでも日本でも中央銀行頼みになりすぎていて政府がうまく機能していません。
今回のFRBによる利下げはトランプ大統領からの圧力もあったとの報道がありますが、日本を含め主要先進国は軒並み中央銀行頼みの金融緩和政策の限界にぶちあたっており、政府としてどのような打ち手を出せるかに今後の世界経済の行方がかかっているといえます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
「利下げ」の概要とその機能、そして今回のFRBによる利下げが不発となった要因についてみてきました。
アメリカではすでに新聞各紙が月内の追加緩和(更なる利下げ)を予想している状況です。
ですが再三申し上げた通り、金利の上げ下げだけで実体経済を完全にコントロールすることは不可能です。
また、利下げには景気刺激策となる反面、重大な副作用もあります。
この副作用についてはまた別の記事でお話したいと思います。
最後までお付き合いありがとうございました。
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