この記事の目次
はじめに
こんにちは、お金のよろず屋管理人のうーざんです。
こんな方は必見です。
けっこうな割合の方がよくわからないままに毎年の「年末調整」をやっていて、筆者の感覚では4人に1人くらいの方はそのために税金を損しています。
筆者が担当するお客様でも、そうした従業員の方はかなり多いです。
本記事では、年末調整で損をしないためのポイント3つを、現役会計事務所職員である筆者が解説していきたいと思います。
もしこの記事を読んで、
「過去の年末調整で損をしていた!」
ということに気づいた場合には今からでも取戻す方法もあります。
その方法については記事の後半で解説していますので、是非とも最後まで読んでみてくださいね。
年末調整で損をしないための3つのポイント
配偶者特別控除とは
お客様と話していて誤解が最も多いのが、「扶養」に関するものです。
世間でいう扶養に関する「〇〇万円の壁」というものには大きく分けて4つあり、そのために誤解が生じやすくなっているのです。
以下は、「〇〇万円の壁」の種類と内容です。
番号 | 金額 | 内容 | 補足 |
---|---|---|---|
① | 103万円の壁 | 自分の所得税がかからない | 所得税の「配偶者控除」適用可 |
② | 106万円の壁 | 社会保険の扶養を外れる可能性あり | 従業員501名以上などの場合 |
③ | 130万円の壁 | 社会保険の扶養を外れる | 従業員数などに限らず扶養不可 |
④ | 150万円の壁 | 配偶者の所得税が上がる | 配偶者特別控除が徐々に減額 |
実は上表のとおり、世間でいわれている「〇〇万円の壁」は「所得税」の扶養に関するものと、「社会保険」の扶養に関するものがごちゃ混ぜになっているのです。
だからややこしかったんだね…
①「103万円の壁」
①の「103万円の壁」というのは自分の所得税がかからないラインが給与収入103万円までということです。
「扶養」というのは配偶者以外の親族(子供や親など)であれば、所得が38万円(令和2年以降は基礎控除改正によって48万円)までの方が入れます。
「扶養」1名につき、年齢などの条件によって「扶養控除」という所得控除を38万円~63万円取ることができます。
しかし配偶者の場合は、所得38万円までであれば「配偶者控除」、それを超えても所得133万円までは「配偶者特別控除」という控除が取れます。
所得133万円というのは給与収入でいうと201万円です。
実は103万円を超えても「配偶者特別控除」を取れるため、給与収入であれば150万円までは控除額は変わりません。
そのため「103万円の壁」についてはあまり気にする必要がなく、働いて稼ぎを増やす方が間違いなく手取りは増えます。
ただし次の「106万円の壁」に該当する場合は注意が必要です
②「106万円の壁」
続いては「106万円の壁」です。
こちらは、従業員501名以上のある程度規模の大きな企業に勤めている場合に、給与が106万円を超えると自分で「社会保険料」を払わなければいけなくなります。
すなわち「社会保険料の扶養」から外れることがあるのが、この「106万円の壁」になります。
③「130万円の壁」
「130万円の壁」というのは比較的耳にしたことがある方が多いのではないでしょうか。
先ほどの「106万円の壁」とは違い、従業員数に関わらず年収がこの金額を超えると社会保険料を自分で支払わなければならなくなります。
すなわち「社会保険料の扶養」から外れます(必ず)。
ちなみに社会保険料の加入対象となるかは、年収ではなく月収で判断しますので正確には月収が108,333円を超えて1年以上継続して雇用される見込みである場合には、
配偶者の社会保険の扶養には入れません。
これが「130万円の壁」です。
社会保険料は大体給与の15%程度の負担になりますので、130万円の壁は「〇〇万円の壁」のなかでも大きな壁となります。
④「150万円の壁」
最後は「150万円の壁」です。
これは「配偶者特別控除」の額が38万円から少しずつ減っていく金額のことを指していて、この金額を超えると配偶者の方の税金が少し増えることになります。
どのくらい税金が増えるかは配偶者の方の所得水準によりますが、一番大きな方で33%(所得税+住民税)ですね。
いずれにしても「配偶者特別控除」の適用上限の給与収入は201万円と、多くの方が思っている以上に大きいので、
配偶者の収入は103万円を余裕で超えてるから、「配偶者控除」の適用はできないな…
と簡単に諦めてしまうと、せっかく控除を受けられるものをみすみす逃してしまっているかもしれませんよ。
「配偶者特別控除」についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、こちらもあわせてご確認ください。
「所得」と「収入」の勘違い
これもかなり多い間違いです。
上記の「配偶者特別控除」の適用とも関連するのですが、
税金の世界では基本的に「収入」がいくらかということは問題になりません。
すべて「所得」がいくらあるかで判断されます。
「収入」と「所得」の違いは、
- 「収入」=純粋にいくらお金を貰ったかということ。経費などの支出は考慮しない
- 「所得」=収入から経費を除いて残ったもの。会社員の場合は個別の経費の算定が難しいため「給与所得控除」という概算経費を控除して計算する
というところです。
つまり基本的には、
所得 < 収入
という関係になります。
この違いがよく分からず、年末調整の配偶者の所得記入欄に収入を書いてしまっていたり、そもそも自己判断で「配偶者控除」の適用を受けられないと思って書かなかったりして、
かなり損をしてしまっている方をよく見かけます。
給与所得の計算は給与収入の額から下記の表の「給与所得控除」を引くことで計算できます。
給与収入の額 | 給与所得控除の額 |
---|---|
1,800,000円以下 | 収入金額×40%-100,000円 550,000円に満たない場合には、550,000円 |
1,800,000円超3,600,000円以下 | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,000円超6,600,000円以下 | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,000円超8,500,000円以下 | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,000円超 | 1,950,000円(上限) |
尚、給与収入660万円以上の方は下記の式で簡単に給与所得を求めることができます。
給与収入の額(税金等控除前の額) | 給与所得の計算式 |
---|---|
660万円以上 1千万円未満 | 収入額 × 90% - 110万円 |
1千万円以上 | 収入額 ー 195万円 |
上記は令和2年以降の場合の算式です。令和1年以前は上記と異なりますのでご注意ください。
iDeCo(イデコ)の適用モレ
これも時々見かけるケースです。
せっかく老後資金の準備をしながら、「節税」メリットも享受しようと「iDeCo(イデコ)」を始めたのはいいけど、
肝心の年末調整で適用が漏れていて控除ができていないケースです。
「iDeCo(イデコ)」は掛金を拠出するだけでは、勝手に税金が痛くなる制度ではありません。
会社員の方であれば「年末調整」で、自営業などの方であれば「確定申告」で自己申告しないと税金は安くなりません。
毎年10月頃に控除に必要となる「〇年分小規模企業共済等掛金払込証明書」というハガキが、国民年金基金連合会から届きます。
この書類をみて、確実に年末調整で控除を受けられるよう年末調整時に配られる「保険料控除申告書」という書類に記入しましょう。
記入方法はこちらのページをご覧ください
「iDeCo(イデコ)」は早く始めただけ得をする制度になります。
「iDeCo(イデコ)」を始めるなら、ネット系証券で手数料も安いSBI証券がオススメですよ。SBI証券で「iDeCo(イデコ)」を始めるならこちらからどうぞ。
また「iDeCo(イデコ)」を始めてない、もしくは「iDeCo(イデコ)」ってそもそも何?という方は、こちらの記事で詳しく解説していますので、こちらも是非あわせてご確認ください。
まとめ
年末調整で損をしないためには、
- 「配偶者特別控除」の適用を漏らさない
- 「収入」と「所得」の違いをきちんと理解する
- 「iDeCo(イデコ)」の控除モレをなくす
以上の3つが肝心になります。
もしも過去に適用をうっかり漏らしてしまったという人は、過去5年分までは遡って控除を受けることができます。
税金を多く払っていたので戻してください
という手続きを「更正の請求」といいますが、インターネットで簡単に作成することができます。
インターネットでの確定申告方法は、こちらの記事で画像付きで解説していますので、よろしければこちらもあわせてご確認ください。
入口だけ確定申告作成コーナートップ一番下の「新規に更正の請求を作成する」というところを選べば大丈夫です。
以上、最後までお付き合いありがとうございました。
毎年12月になると「年末調整」をするからと経理(総務)から書類を何枚か渡されるけど、よくわからなくて自分と家族の名前だけ書いてハンコを押して提出しているよ…