【半沢直樹2コラボ連載その⑧】1円でも合わないと帰れない伝説について<元銀行員のウラ話>

この記事の目次

はじめに

こんにちは、お金のよろず屋管理人のうーざんです。

(勝手に)「半沢直樹2コラボ連載企画」も第8弾となりました。

今回は銀行員の都市伝説(?)のなかでも3本の指には入るであろう「アノ伝説」です。

ズバリ「銀行員は1円でも合わないと帰れないのは本当か?」です。

結論からいうと、「まぁ大体ホントかな…」といった感じです。

それでは早速あの有名な都市伝説の実態に迫っていきましょう。

そもそも「合わない」って何?

まずはそもそも「合わない」って何が合わないの?

というお話からです。

銀行は毎日たくさんの現金を預かったり払い出したりしています。

これらはすべて「伝票」の指示に基づき、「勘定系システム」という機械を使って行われます。

皆さんも銀行の窓口でお金を出すときには「出金伝票」という伝票(青色)に金額を記入してハンコを押しますよね(今銀行の窓口で出金する人は少ないかもしれませんが…実は筆者も銀行員でしたが顧客として銀行に行ったことは人生で3回しかありません(笑))。

この「伝票」の指示通りすべて正しく「勘定系システム」が処理されていて、お金の受け渡しも間違いなければ「伝票」の集計結果と、銀行の勘定システムでの現金残高が一致するはずです。

これが「合っている」という状態です。

つまり「合わない」というのは、

「伝票」の集計結果と「勘定系システム」上での現金残高が何らかの理由で一致しない

という状態のことをいいます。

ちなみに「1円」というのは、銀行員の大変さ(?)を強調するために極端にいった言葉で、実際に「1円」の不合というのはほとんどありません。

むしろ桁違いだったりで何千円とか何万円とかの金額が合わないケースが多いですね。

「合わなくなる」理由は、

  • 桁違い(伝票は1万円なのに10万円で機械に入力したなど、逆ももちろんあります)
  • 「入金」なのに「出金」で誤って処理した(逆も)
  • 窓口でお金を多く渡してしまった(逆も)
  • 外回りの職員が預かってきた現金と伝票記入の金額が違う(100万円の入金なのに現金が99万円しかないなど)
  • 現金自体がどこかに紛れ込んだりしてなくなってしまった

大体こんなところでしょうか。

まずは伝票と勘定系システムの処理が一致しているかを確認します(その前に「合わない」金額で大体どういった間違いがありそうか見当をつけますがこれはけっこう経験がものをいうのでベテラン職員さんが活躍します)。

それでも分からない場合は、防犯カメラなどを確認して行員の行動を徹底的にチェックして間違いの原因になるような行動がないか確認していきます。

勘定が「合うまで帰れない」のは本当か?

では「勘定が合わないと深夜まで帰れない」というのは本当でしょうか?

冒頭でお話したとおり「大体ホント」です。

昔は本当に「深夜まで残業して合わない理由を確認する」といったこともあったようですが、最近の銀行は(帰宅時間)に関しては比較的ホワイトです(笑)

そのためある程度の時間(21時~22時くらい)まで探しても「合わない」原因がわからない場合は、翌日以降に持ち越します。

翌日以降も引き続き探しますが、その場合には全員総出で探すといった感じではなくごく一部の責任者や担当者だけで引き続き原因を究明するというかたちになります。

この際に少額だからといって

「合わないから誰かがポケットマネーで補填する」といったことは絶対にあり得ません

銀行員は入行と同時に「これだけは絶対にやってはいけないこと」というのをいくつか叩き込まれますが、そのうちのひとつがこの「ポケットマネーでの補填」です。

なぜ「絶対にやってはいけない」かというと、こうしたことが「当たり前」になってしまうと次第にお金の取扱いがルーズになっていくからです。

「合わないけど補填しておけばいいや」

という感覚になっていき、それが高じると究極は「横領」をしても“後で補填しておけばいいや”という感覚になりかねない

ということで絶対に「ポケットマネーで補填する」ことはあり得ません。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

かの有名な都市伝説「銀行員は1円でも合わないと帰れない」は、

「大体ホント」です。

合うまで徹底的に原因究明に努めますが、それまで絶対に帰れないということではありません。

とはいえこうした「出納事故」は支店査定において大幅なマイナスになります。仮に業績項目でトップであったとしても、こうしたことが一度でもあれば評価は最低クラスとなってしまいます。

だから血眼になって探します。

実は筆者も「現金」ではないですが、「現金同等物」である印紙を紛失してしまったことがあり夜遅くまで支店全員を残業させてしまった経験があります。

筆者は外回り担当だったのですが、外回り担当は全員現金を預かる可能性があるため「印紙」を持っています(現金5万円以上の受領時には領収書と同じく印紙を貼付します)。

この印紙をなくしてしまったのです…。

本当にこの時のことは思い出しただけで具合が悪くなります。外回りから帰ってきた17時ごろに印紙がないことが判明します。

そこから21時頃まで支店全員で必死で捜索しました。出てくれば「支店内の出来事」で終わりますが、もしも外回り中に落としたりしていた場合には出てこないので、その時点で支店の評価は最低ランク確定です。

もう気が気ではなく泣きそうになりながら探しました。

そしてそろそろ帰ろうという空気になったころ、「あった!」と一人の先輩の声が。

いやー、嬉しかったですね。嬉しいやら情けないやらホッとしたやらで、ボロボロ泣いてしまいました。泣きながら皆に謝りました。

後にも先にも自分が原因で「合わなかった」のはこの時だけでしたが、やはり定期的に「合わない!」となることはありました。

でも最近は「オープン出納機」という機械で現金を勘定するため、昔と比べて確実に「合わない」ことは減りましたし、あってもすぐに見つかることが多くなっています。

そんなわけで「銀行員は1円合わないと帰れない伝説」は、「大体ホント」ということでした。

以上、最後までお付き合いありがとうございました。

次回の(勝手に)「半沢直樹2コラボ連載企画」は第9弾「銀行員の給与事情について」です。

お楽しみに!

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ABOUT US
うーざん
旧帝国大学の経済学部を卒業後、大手地方銀行に就職。法人融資、個人への資産運用アドバイス、相続対策等の業務に従事。 より顧客の近くで仕事をしたいと一念発起し銀行を退職。会計事務所に就職し、お金にまつわる様々な顧客の悩み解決に向け日々活動している。 またファイナンシャルプランナー資格と保険販売資格も保有しており、顧客の保険見直しなどの悩み相談にも乗っている。