こんにちは、お金のよろず屋管理人のうーざんです。
さて、いよいよ4月19日(日)から、「半沢直樹」の続編がスタートしますね。
前作が放送されていた頃には筆者はまだ現役の銀行員でしたので、お客さんから
「あれって実際のところどうなの!?」
とよく聞かれていました。
そんなわけで今回からは(勝手に)半沢直樹2とコラボさせていただきまして、銀行や銀行員に関する<ウラ話>を元銀行員である筆者が赤裸々にお話していきたいと思います。
それでは早速第1回「金融庁検査の実態」についてお話していきたいと思います。
この記事の目次
金融庁検査とは?
ドラマでは6代目片岡愛之助さん演じるオネエ口調の検査官「黒崎」が、事あるごと銀行や半沢を目の敵にして厳しい検査を行っていましたね。
第2作にも引き続きキャスティングされているようですので、またしても「半沢vs黒崎」の戦いが見られるかもしれませんね。
ドラマではかなり過激な検査の様子が描かれていましたが、実際のところ「金融庁検査」って何をするものなのでしょうか?
銀行というのは他人様のおカネを預かって、別の人に貸し出すという大変重要な業務を行っています。ひとたび銀行が破たんすれば、地域の経済に多大な影響を与えてしまいます。
そのため銀行は「免許制」によって営まれており、国の監督下と「銀行法」や「銀行業法」という厳しい法律の下運営されているのです。
その銀行の監督業務を行っているところが「金融庁」になります。
銀行が国の「金融システム」を維持するための正しい経営を行っているか、ということを確認するために行われるのが「金融庁検査」になります。
金融庁検査はすべての銀行や信用金庫、信用組合などに対して実施されます。頻度は2年に1回行われます。
また金融庁検査の行われない年には日本銀行の考査(銀行内では日銀検査といっていました)が行われるため、
毎年金融庁か日銀の検査が行われているということになります。
ちなみに厳しさでは断然「金融庁検査」の方が厳しいので、それぞれの検査のときの銀行内の緊張感はかなり違います。
検査が入るとどんな感じ?
検査は2年に1回ありますが、基本的に管轄する財務局から「いついつから検査に入りますよー」という通知があります。
財務局というのは金融庁の「出先機関」で、各地域ごとにあります。例えば関東地区なら関東財務局、近畿地区なら近畿財務局が管轄しています。
この検査通知があってからが、大変です。
検査に備えて銀行では各種の「準備」でてんやわんやになります。どんな「準備」をするかは第2回で詳しくお話しますので、お楽しみにしていてください。
検査には2通りあって、
- 各支店毎の主要な貸出先を対象とする「与信検査」
- ランダム抽出による数店舗の「実地検査」
があります。
与信検査とは
「与信検査」では、
「この会社は業績がこんなに悪化しているのに、なぜ無担保で貸出を増やしているんですか」
「この会社は2期連続で赤字なのにどうして格付が正常先なんですか?要注意先にランクダウンが必要じゃないですか?」
などのように各支店の個別具体的な貸出内容について精査され、場合によっては上記のような格付(債務者区分)の見直しを指導されます。
さすがにドラマの黒崎検査官のような恫喝まがいのことは少なくとも今は行われていませんが、ツッコミはかなり厳しいようです。
「与信検査」は通常銀行の本店で行われるため、各支店から支店長や融資課長などの融資の責任者が集まって支店ごとに精査されます。各支店ごとにどこの貸出先が検査対象となるかは金融庁側から事前に指定されます。
ちなみに融資先の格付(債務者区分)というのは、その会社の決算や事業内容などを踏まえて銀行独自に取引先を「採点」したものです。
その点数によって債務者区分が決まります。債務者区分には「正常先」「要注意先」「要管理先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」という6つの区分があります。
銀行はこの債務者区分に応じて「貸倒引当金」という経費を、貸出が回収できなかったときに備えて予め一定額積んでおくことが義務づけられています。
例えば正常先なら1%未満ですが、要注意先で2%程度、要管理先になると15%程度、破たん懸念では60%~70%程度といった感じで貸出額に対して一定割合を「貸倒引当金」という経費に繰り入れるのです(貸倒引当金繰入率は2015年日銀金融システムレポートより)。
今の銀行の新規貸出の平均金利は0.7%台です(日銀 貸出約定平均金利の推移 2020年1月より)。
つまり要注意先に転落しただけでも貸出額の2%を経費に繰り入れなければいけないので、赤字になってしまいます。
ですから、この格付や債務者区分を巡る攻防は銀行の業績にも影響する重大事ということで銀行もかなりの緊張感で臨むことになります。
実地検査とは
実地検査とは、全支店のなかからランダムで抽出された数店舗が犠牲になる痛ましい検査です。
具体的には、朝出勤するとすでに鍵の開く前の支店にいかつい顔をしたスーツの方たちが何人も待機していて、まずは挨拶もそこそこに通勤用のプライベートのカバンをまさぐられます。
そこでだれか一人でもカバンに通帳(自分のものでもネチネチ言われます)や銀行内部の書類、顧客情報などが入っていたら暗い検査結果になることはその時点で確定します。ご愁傷さまです、はい。
そして支店のカギを開けて中に入ると、次は「引出しとキャビネットは我々がいいと言うまで開けないでください」という宣告がなされ、検査官立ち合いのもと引き出しをひとつずつ開けて中身を確認されます。
ここでも引き出し内から業務に関係ないものや通帳(自分のものでも)が出てきたらアウトです。私の先輩はこのときに何を思ったか引き出しにちょっとエッチな雑誌を入れていたのが見つかって、検査官には苦笑いされましたが後で支店長にこっぴどく叱られていました(笑)
引き出しチェックが終わったら、いよいよ支店の業務体制の検査が始まります。検査項目は多岐にわたり
- 融資などの契約書類に顧客や担当者の印鑑が漏れてないか
- 通帳や手形・印紙などの重要書類の保管状況は適正に行われているか
- 融資した顧客に対するイレギュラーな取扱いがないか、あったとしても速やかに解消されているか
- 保険や投資信託などの金融商品の販売書類の保管状況や、面談記録などなどによる適正な販売状況の確認
- 行員ひとりひとりへの面談
などとにかく色々な検査が行われます。
また朝からいるケース以外にも、ある支店の検査が終わって日中に突然検査官が来るというケースもあります。
外回りをしていた場合などに支店に戻ると突然検査官が入口で待ち構えていて、外勤用のカバンやスーツのポケットなどをまさぐられるためかなりドキドキします。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
金融庁検査は半沢直樹のドラマほどではないものの、銀行や銀行員にとってはかなり胃が痛くなるイベントであることは間違いありません。
この検査であまりに改善事項や指摘事項が多かった場合、銀行内での支店の評価や支店長などの次期ポストにまで影響してしまうこともあります。
次回は「金融庁検査の実態パート2」ということで、金融庁検査の事前準備の実態についてお話していきたいと思います。
原作にあった「疎開」といわれる資料の「一時的避難」などの実態について触れていきたいと思いますのでお楽しみに。
以上、最後までお付き合いありがとうございました。
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